【既報関連】欧州連合(EU)は19日、ブラジル国内20カ所の食肉工場で生産された鶏肉の輸入を停止する決定を下したと、20日付ブラジル各紙・サイトが報じた。
ブラジルからEUに輸入されている鶏肉のおよそ3分の1が停止処分の対象となる。政府試算、業界試算で差があるが、処分による損失は、年間2億3千万~3億ドルだという。EUは、ブラジル産鶏肉は、検査の結果「いかなるサルモネラ菌も許容しない」という規則に反していると説明している。
EUがブラジル産鶏肉をサンプル検査した結果、全体の0・6%からサルモネラ菌が見つかった。鶏肉は加熱調理されるため、健康に実害が出るほどではないが、EUの基準では不合格だ。
禁輸措置を受ける20工場中、12工場はブラジル・フーズ社(BRF)の傘下だ。同社は、09年に食肉大手のペルジガン社がサジア社を買収した事で誕生した複合企業で、今年3月に連警が行ったトラパッサ作戦(昨年開始のカルネ・フラッカ作戦の第3弾)で、検査データの改ざん疑惑を追及され、元社長が逮捕されている。
BRFは今年、同措置によって10億レアルの損失を被ると関係者は見ている。これは昨年度の売上の3%だ。また、BRFの昨年度決算は11億レアルの赤字だった。
ブラジル農牧連合(CNA)によると、昨年の鶏肉輸出総額は71億ドルで、7億7千万ドルはEUとの取引であげていた。
ブライロ・マッジ農相は、農務省は銀行と共に、禁輸措置により財政危機に陥った企業を救済する事も可能だとした。
マッジ農相は「『消費者の健康上の問題』を口実とする保護貿易主義の被害をブラジルは被っている。受け入れるわけにはいかない」と語り、この問題について事前に言及した17日と同様、世界貿易機関(WTO)に訴える姿勢を保った。
BRFは、「正式な通達も受けていないし、発表前の聞き取りも、誰からも受けていない。禁輸措置となれば抗議する」との姿勢を見せている。
BRFは19日、声明文で、「EUの決定は自国産業を保護する政治的思惑から下されたと、当社は思っている」と反発した一方で、生産調整として、サンタカタリーナ州、ゴイアス州、パラナ州の、合計4工場の従業員に集団休暇をとらせる事も発表した。
またBRFの経営審議会は18日、次期経営審議会議長に、石油公社ペトロブラス社現総裁のペドロ・パレンテ氏を指名。同氏もこれを了承した。パレンテ氏は26日の株主総会で正式に就任する事が濃厚だ。