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沖縄県人会=日本人迫害謝罪請求を支援=「これは自分自身の問題」=役員ら全会一致で承認

沖縄県人会に協力を要請した奥原さん

沖縄県人会に協力を要請した奥原さん

 【既報関連】戦争前後の日本移民迫害を巡って、奥原マリオ純さんが2015年12月に損害賠償を伴わない謝罪要求訴訟を連邦政府に起こした件に関して、ブラジル沖縄県人会(島袋栄喜会長)は19日の定例役員会で支援することを全会一致で決めた。同件の早期審議開始を求める嘆願書を県人会名義で法務省に提出し、ブラジル移民110周年の本年中にも判決を得たい考えだ。

 奥原マリオさんは110周年を好機と捉え、審議を早めるためにブラジル日本文化福祉協会に協力を要請したが断られた。〃最後の頼み綱〃が沖縄県人会だった。
 1943年8月に起きたサントス強制立退時の在住日本人名簿が一昨年に発見されたことを機に、その大半が沖縄県人であることからブラジル沖縄県人移民研究塾(宮城あきら塾長)が調査を開始した。
 宮城塾長は「生存者の生々しい声を実際に聞き、胸の詰まる思いだった。筆舌し難い先輩の苦しみや悲しみの上に今日がある。76年間、闇に埋もれた真実に光を当てることが、父母の思いに応えていくことになる。これは自分達自身の問題だ」と強調した。
 『群星』第3号で強制立退き者名簿と生存者の証言を掲載して以来、地方の沖縄系社会からも「自分も立退き者」との新証言が集まっている。「『二度と同じ過ちを繰り返してはいけない』という奥原さんの姿勢に感激した。我々が後押しし、何とか解決に向け力を合わせてやっていきましょう」と訴えた。
 役員からは、強制立退で苦渋を味わった親族から聞いた体験談や、第2次大戦での悲痛な記憶が次々と語られはじめ、会議室には熱気がこもった。「はやく採決に」との声に促され、全会一致で承認された。
 宮城塾長は「皆が同じ気持ちだったようだ。胸の奥に仕舞い込まれていた戦争の記憶が蘇ってきたのでは」と胸をなでおろした。
 孤軍奮闘してきた奥原さんも「5年前からやってきたが、今日は言葉で言い尽くせないほどの喜び。心から感謝したい」と涙を滲ませていた。今後、嘆願書は飯星ワルテル連邦下議から、法務大臣に手渡される予定。
 先月24日に映画『闇の一日』(2012年、奥原監督)の上映会が県人会で催され、その席上、奥原さんは「今が最後のチャンス。生存者がいるうちに解決したい」と謝罪運動への協力を求めていた。
 PT政権時代に軍政時の人権侵害を調査することを主目的に真相究明委員会が発足し、その流れで13年にサンパウロ州議会で日本移民迫害に関する公聴会が開かれた。だが同委員会には約2万件もの訴訟案件が提出され、まだ2000年代前半のものが審理されている状態。通常なら、15年に受け付けられた奥原さんの謝罪請求を審理するのは、数年先だと見られている。


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 奥原マリオさんは「日系社会の一部では移民110周年は祭典であり、過去の悲しい事実に向き合うときでないと考えられている。だがそうではない。ブラジル人法律専門家の相談したら『110年周年だからこそ好機』といわれた」と語った。だが、軍事政権下の人権侵害の真相究明が左派政権の時に始まったので、「10月の大統領選挙で元軍人のボウソナーロ氏が勝利した場合、委員会の活動が停止されるかも」と奥原さんは警告。連邦政府からの謝罪を勝ち取れば、ブラジル日系人としては初。歴史的な快挙といえそうだ。