10月の大統領選を前に、「隠れた大票田」と目され始めている福音派の支持を巡る動きが活発化。特に、現時点での支持率が高くない候補者らが、福音派の信者を後ろ盾として逆転を狙っていると、4月29日付現地紙が報じている。
ブラジル世論調査・統計機関(Ibope)の調査によると、ブラジルの有権者の27%(3950万人)は福音派信者だという。地理統計院(IBGE)のデータでの福音派信者の割合は1991年にはわずか8%、2010年でも22%だったことを考えれば、かなりの増え方だ。
カトリック信者は8千万人、それ以外の宗教の信者または無宗教の人は2450万人いる。
また、2014年の下院議員選では、全体の14%にあたる72人の福音派議員が当選しており、その勢いは2018年にも増すだろうと言われている。
この福音派の票に、とりわけ、現時点では支持が低い大統領候補者が狙いをつけはじめているという。それは福音派の場合、教会のリーダーが特定候補の支持を表明すると、それに従う信者が多いためだ。
たとえば、与党・民主運動党(MDB)からの出馬が有力視されながらも1%の支持に止まっているエンリケ・メイレレス前財相は、かねてから福音派のイベントへの出演に熱心で、今年に入ってから、既に四つの福音派教会での行事参加を取り付けているという。
また、ブラジル共和党(PRB)候補のフラヴィオ・ロシャ氏も1%程度の支持率だが、同氏はブラジル牧師協議会連盟のロブソン・ロドヴァーリョ会長と旧知の仲だ。さらに、PRB党首のマルコス・ペレイラ氏は福音派でも大手のウニベルサル教会の指導者のひとりだ。
さらに民主党(DEM)候補のロドリゴ・マイア下院議長も福音派とのかけひきは既に実績がある。16年の下院議長選の際、DEMのサンパウロ州、リオ州の福音派支部に援助を求め、「神の力」のヴァルドミロ・サンチアゴ氏や「神の会議」のシラス・マラファイア氏といった知名度のある福音指導者の支持を得た影響力で当選したという。その翌年に、それと引き換えるようにマイア氏は下院で「強姦被害者の妊娠の中絶禁止」のための委員会設置を認めている。
そして、現時点でルーラ元大統領に次いで2位の支持率のジャイール・ボルソナロ氏(社会自由党・PSL)も福音派に接近しての票獲得を狙っているという。
ボルソナロ氏は元は熱心なカトリック教徒で、以前所属していた政党もカトリック系のキリスト教社会党(PSC)だったが、既にシラス・マラファイア氏の支持を受けている。さらに、現在はまだ交渉中の段階ではあるが、議会内の宗教議員リーダーであるマグノ・マウタ上議(共和党・PR)を副候補に迎えてシャッパを組みたいと考えている。