軍政時代の1974~79年に大統領職を務めたエルネスト・ガイゼル氏(1907~96年)が、反体制派の政治犯の粛清を了承していた事実を記した記述が米国CIAの所管文書から見つかったことが明らかとなった。11日付現地紙が報じている。
同件は、ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)のマチアス・スペクトル調査員の研究で明らかになった。その記述を書いたのは、1974年当時にCIAのディレクターだったウィリアム・コルビー氏で、当時のヘンリー・キッシンジャー長官宛ての報告書に書かれていたという。
問題の報告書は2015年に機密扱いから外れた記録に含まれていた。機密扱いから外れた文書は、ニクソン大統領からフォード大統領に至るまでの1973年から76年にかけての記述だったという。
ガイゼル大統領に関する記述は1974年4月に書かれ、ニクソン大統領時代の「第99番」と名付けられた書簡に記載されていた。まず、その最初の段落に、「(新しく就任した)ガイゼル大統領は、(前代のエミリオ・メジシ大統領に)引き続き、反体制派の政治犯を粛清する方針を継承することを決めた」と書かれていたという。
そして、その次の段落では、ガイゼル氏が74年3月30日に、粛清実行を担当していた陸軍情報センター(CIE)のミウトン・タヴァレス・デ・ソウザ将軍(ミウチーニョ)や、全国情報サービス(SNI)の(後のガイゼル氏の後任大統領でもある)ジョアン・フィゲイレード将軍らと会合を行ったことが記されている。
この会議の中でミウチーニョ氏が「1973年には104人の粛清が行われた」と報告したところ、フィゲイレード氏も粛清継続に賛成したという。ガイゼル氏は再民主化を考えていたため、再考を求めたが、4月1日にフィゲイレード氏に「粛清は続けるが、本当に危険な人物だけに限ってくれ」と語ったという。
この会合後の4月3日と4日に、CIEは、内部分裂で10人を殺害したブラジル共産党(PCB)の党員3人をサンパウロ市で誘拐し、拷問を加えて処刑死させている。
また、ガイゼル氏が大統領だった時代は、数百人の共産主義者が逮捕されており、歴史的政治犯として名高いジャーナリストのヴラジミール・エルゾーギ氏ら3人が、サンパウロ市の陸軍秘密警察(DOI)で殺害された。これらの死はCIEの秘密行為以外のものであったため、ガイゼル氏は1976年に陸軍大将のエジナルド・ダヴィラ・メロ氏を更迭している。
ガイゼル氏は79年の恩赦法制定などにより、「民主化を進めた」という印象を持たれている。