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セレソンへのシニカルな見方はいつ終わる?

代表選出された23人

代表選出された23人

 14日、W杯サッカーがちょうど1カ月前を迎えた時点で、セレソンが出場23選手を発表した。ただ、盛り上がりには欠けている▼それはなぜか。「前回の大会でドイツに屈辱の1―7の大敗を喫したことで、国民からの信用が薄れているから」。それもある。「出場しても、またみじめな敗戦をして終わるだけなのでは」。そういうペシミスティックな感情論もたしかに多く見られる▼ただ、セレソンに対してのシニカルな見方は、その自国開催のW杯の前年のコンフェデレーションズ杯のときからはじまっている。事の発端は、ときの労働者党(PT)政権が、2000年代のルーラ政権から続く繁栄の栄光を、大きなスポーツ大会と共に最高潮に持って行こうとした目論見に国民が白けた感情を抱いたからだ。「生活実感として、何の豊かさも実感できないのに、何を大金はたいてはしゃいでいるんだ」。こういう感情が積もりに積もって、W杯の予行演習的存在のコンフェデ杯の際に、全国的なデモの発生という、思わぬ社会混乱を招く結果となった▼軍政時代からセレソンは、どこか「政府の道具」だとか「汚いものの象徴」みたいな見方を、される傾向がずっとある。悪いことも続いた。「どうせ優勝も買ってるんだろう」などと穿った見方をしていた一部国民の根拠のない観測は何のシナリオにもなかった1―7という、事故のような敗戦によって打ち消された。あれで今度は国民の国に対しての自尊心が揺らいだのだ▼そしてブラジル民が自信をなくすような事態は社会で引き続いた。それが、世界の汚職史上でも最大規模のラヴァ・ジャット作戦で次々と明らかにされる政治腐敗。2000年代の未曾有の好景気も、W杯もリオ五輪も、汚い金に支えられてのもの。いまや残ったのはPT政権の崩壊と、機能不全に陥ったリオ州、そして、PT政権の招いた経済悪化の尻拭いをしている不人気な連邦政府・・というわけだ▼そんなこともあり、「素直にサッカーを楽しむ」というより、「早く次の大統領を決めたい」という気持ちの方が強くなっている、というのが国民の偽りのない意見なのかもしれない。サッカーでも、ブラジル・サッカー連盟(CBF)の汚職で前会長が国外で逮捕。さらに現会長も職務停止命令が出されるなど、起こっていることはブラジル政界と同様。これもサッカー離れを起こさせる原因にもなっている▼こうした国の空気はコラム子も理解はできる。だが、自信を失ってやけになって、目の前にあるものもパニックで何も見えなくなるのだとしたら、それこそ4年前に1―7で負けたセレソンと何も変わらないのではないか、とも思う。少しでも前向きになれるものに目を向けてポジティヴになることも必要だ▼事実、ブラジルのサッカーの現状はあの惨敗以降、良くなっている。16年のリオ五輪では金メダルを獲得し、チッチ監督を迎えてからのセレソンは南米予選をぶっちぎりで優勝。今のセレソンのレギュラーの陣容だって、レアル・マドリッドやバルセロナ、マンチェスター・シティにPSGといった、世界屈指の強豪チームのメンバーで構成される、他の国がうらやむような顔ぶれだ。ロナウジーニョやカカーの世代の早すぎた急激な衰えゆえに、当時22歳のネイマールひとりに攻撃を頼らざるを得なかった前回大会とは明らかに選手の厚みが違う▼前回大会のときはコンフェデ杯からくすぶっていた国民の重苦しい感情がネイマールの負傷やあの惨敗を無意識に招いたようなところがあった。今回も今のところ空気は重苦しい。だが、「W杯で優勝して、10月には新しい大統領も選べる」くらいの楽天的な気楽さがあるくらいの方が、むしろ良い結果が出るのでは。(陽)