トラック・ストにより全伯に甚大な被害が生じており、日系の企業や養鶏場、レストラン、病院などにも悪影響が広がっている。すでにトヨタやホンダは工場のラインを停止し、サンパウロ州で消費される卵の5割を生産するバストスの日系養鶏場にも飼料が届かず、卵が出荷できないという危機的状況になっている。セアザも空っぽという未曾有の中で、寿司店は鮮魚が手に入らず、青果店に野菜が5割り増しの値段で卸されている。早く復旧しないと、日系関連の被害も深刻なことになりそうだ。
ストにより部品の配送がとまり、自動車製造産業に深刻な悪影響が広がっている。
ブラジル・トヨタ自動車は、28日午前の時点でソロカバ、インダイアツーバの2工場の稼動を停止している。サンベルナルド・カンポの工場も一部稼動しているのみで、ポルトフェリス工場も同日中にも稼動を停止させる見込みだ。
また、販売代理店への完成車輸送にも支障をきたしており、ブラジルから諸外国への輸出業務も停止された。同社は「ストの影響を注視していく」とした。
ブラジル・ホンダは、マナウスの二輪製造工場は通常通り稼動しているものの、四輪車を製造するサンパウロ州のスマレ工場は自動車部品の納入が滞り、23日から稼動が停止されている状況だ。
農業界のなかでも養鶏は、一番深刻な状況に陥っている業界の一つだ。
南麻州テレーノス市の同市農業組合会長、黒川レイナルド功さん(36、二世)は今回のトラック運転手のストライキには「本当に困っているよ」と一言。同組合が販売する卵は南麻州市場の80%を占めている。
「一番は飼料。組合の飼料工場から出せる餌は水、木曜にはなくなってしまう。その後は玉蜀黍でどうにかしなきゃいけないが、栄養バランスがガタガタになる」と語り、「玉蜀黍も何日持つか…」とため息をついた。
また、ミナス、聖、パラナ州から送られてくる卵用のケースや段ボールのストックも減り続け、他市に出荷するトラックも止まった。「折角生んだ卵も出荷できず、養鶏場内に溜まっていく」と嘆いた。
サンパウロ州バストス市の養鶏場グランジャ・ツルの天野健二社長(68、山梨)によると、同市も同様の状況だ。バストスはサンパウロ州の卵消費量の50%、国内の20%を生産する「卵の都」として有名だ。大手養鶏家の大半を日系人が占めるなど、今も農業界に日系人の大きな影響力が残っている業界だ。
同養鶏場では50万羽を飼育し、内15万羽が老鶏。天野さんは飼料の消費を遅らせるため、老鶏の給餌を2週間程絶つという。「それでも飼料が数日分しか残っていないので、もう切れてしまう…。いつもはこんなことはやらないんだが、しょうがない」と心苦しそうに語った。
天野さんによると、市内のスーパーの野菜は切れ、あるのは卵のみだそうだ。1955年に移民した天野さんは「こんな状況は初めて見た。国中同じ様なものだと思うが、本当に困っている」と語った。