14日に開幕したW杯も多くの国が初戦を終え、まだ一戦も戦っていないのはH組のポーランド、コロンビア、セネガル、日本だけとなった。
「強豪国といえども、W杯開幕は独特の緊張感があり、簡単な試合にはならない」が定説だが、今大会は多くの優勝候補が初戦を勝利で飾ることが出来なかった。大会3日目の16日に、アルゼンチンがアイスランドと引き分けたのも驚きだったが、世界に衝撃が走ったのは、何と言っても17日にドイツとブラジルが揃って勝利を逃した事だ。
ドイツとブラジルはそれぞれF組、E組に所属しており、この2組の1位と2位は〃たすきがけ〃(「E1位とF2位」、「F1位とE2位」)で、決勝トーナメント一回戦で対決する。
大会前は「ブラジルもドイツも1位通過濃厚で、両者の対戦は決勝までない」との見方が大勢だったが、17日はドイツが先にメキシコ相手に敗戦を喫した事で、「ブラジルがE組1位になると、ドイツがこれから建て直しても2位止まりだった場合、一回戦で当たってしまう」との心配が発生した。
当然、まずは自分たちの勝利が優先で、ブラジルが「あえて2位で抜けようか」などと考えてスイス戦を戦った可能性はほとんど0%だが、果たしてブラジルも直前の親善試合での好調ぶりはどこへやら、スイス相手に引き分けてしまった。
ブラジルは、W杯開幕戦はこれまで9連勝中で、引き分けてしまったのは1978年アルゼンチン大会のスウェーデン戦以来40年ぶりだ。
「1958年、62年、70年、94年、2002年と、優勝したときは全て初戦に勝っている。ブラジルが初戦に勝てずに優勝したケースはない」や、「前回大会の準決勝、3位決定戦、と続き、今大会の開幕戦も勝てず、W杯は3試合連続勝ちなし」などと、ブラジルメディアも膨大なデータから、多少煽りぎみにファンを心配させるような事を書いている。
開幕直前にネイマール、コウチーニョ、ガブリエル・ジェズス、ウィリアンの同時起用説(超攻撃的布陣)が急に支持を高め、慎重派のチッチ監督がそれに乗っかってしまったのもやや迂闊だった。バランスをとる目的で行った、フェルナンジーニョやレナト・アウグストの投入が決して悪くなかったので、次のコスタリカ戦の先発イレブンが注目される。
「相手はグループ最弱のコスタリカ。やはり攻撃的布陣で得失点差も稼ぎたい」も、「南米予選までのバランス型布陣に切り替える」も、それなりの説得力があり、結果論で厳しく論評されてしまうのはブラジルの宿命。チッチ監督はいきなり難しい心理的ジレンマにはまり込んだ。