ブラジル最高裁第2小法廷が19日、労働者党(PT)党首で上議のグレイシ・ホフマン氏と、夫で元企画、通信相のパウロ・ベルナルド氏らに対する、2010年上議選での収賄・資金洗浄疑惑に関する審理を行い、証拠不十分で無罪とする判決を下したと20日付現地紙が報じた。
ホフマン、ベルナルド夫妻は、検察庁が2015年に提出したラヴァ・ジャット作戦(LJ)に関与したとされる政治家のリストに名を連ねていた。ロドリゴ・ジャノー検察庁長官(当時)は2016年に、両氏が100万レアルの賄賂を受け取ったとして起訴した。
19日の審理は同裁LJ報告官でもあるエジソン・ファキン判事が報告官を務め、セルソ・デ・メロ判事が内容を確認する書記官役を果たした。
LJ捜査では報奨付供述が多用されているが、ホフマン氏らに対する告発は、元ペトロブラス理事のパウロ・ロベルト・コスタ氏や闇ブローカーのアウベルト・ユセフ氏らの報奨付供述を基にしている。検察は、ホフマン氏への賄賂はベルナルド氏がコスタ氏に要請、企業家のエルネスト・クグレル・ロドリゲス氏が手渡したとしていた。
だが、19日の審理では、報告官のファキン判事も、検察は供述内容を立証するに足る証拠を提示しておらず、収賄と資金洗浄は立証不能と認めた。だが、同判事は、賄賂の一部が実際に動いた事を示す証拠はあるとして、高等選挙裁判所への申告漏れによる選挙法違反(二重帳簿、カイシャ2)の容疑に替えた。
セルソ・デ・メロ判事はこの主張を認めたが、ジアス・トフォリ、ジルマル・メンデス、リカルド・レヴァンドウスキーの3判事は、証拠不十分で起訴そのものが不成立とし、無罪に投じた。
これにより、ホフマン氏ら3被告は免罪となった。ホフマン氏はまだ、2件で被告となっているが、判決直後、社会ネットワークサービスに「グレイシ免罪!」とのメッセージを流している。
今回の裁判はLJで起訴された政治家に対する2件目の審理だ。1件目のネウソン・メウエル下議は全会一致で断罪されたが、ホフマン氏らが免罪となった事で、報奨付供述に基づく起訴の弱点も明確になった。
最高裁では今後、連邦警察による司法取引の可否も審理するが、供述のみに基づく起訴は、今回同様、証拠不十分で免罪となる可能性が高い。
また、今回、無罪を主張した3判事は、他の審理でもファキン判事の票に対峙する姿勢を見せていた点を懸念する人もいる。第2小法廷では、26日にルーラ元大統領からの人身保護令適用要請を審理する事も決まっている。元大統領への人身保護令適用は大法廷で審理済みだから、それに倣うとの見方が多いが、前記3判事とメロ判事は第2審後の刑執行反対派だから、元大統領が釈放されると見る人もいる。釈放されれば、ルーラ氏の大統領選出馬が現実味を帯びるため、26日の審理の行方は大統領選を占う上でも重要だ。