ブラジル連邦最高裁(STF)大法廷が20日、従来は連邦検察庁(MPF)だけに限られていた報奨付供述(デラソン・プレミアーダ、以下「DP」)を被疑者との間で行う権利を、連邦警察や各州市警にも認める決定を下したと、21日付現地各紙が報じた。
DPは〃司法取引〃とも呼ばれ、嫌疑を認めた被疑者が、自分が知っている事実を述べ、証拠も提出する形で、捜査に協力し、引き換えに刑の減免を受けるものだ。政界大型汚職捜査のラヴァ・ジャット(LJ)作戦は、DPによって進展を見せてきた捜査の一つだ。
「警察に被疑者とDPを行う権利を認める」にはSTF全判事11人の内10人が賛成し、「DPの際、警察は検察の承諾を得る必要はない」には8人が賛成した。
DP成立を最終的に承認するのは事件担当の裁判官で、DPを巡る見解が警察と検察で食い違う場合も、裁判官は警察側のDPを承認できる。
STFでの同件審理の報告官、マルコ・アウレリオ判事は、「検察の権限を侵犯しない限り、警察も独自に被疑者とDPを結ぶ事が出来る。検察の承諾も必要ない」と主張しており、カルメン・ルシア長官を含む7判事が賛成した。「検察の権限を侵犯しない」とは、「不起訴にする」と被疑者に約束したりしないことだ。捜査終了後に裁判所に起訴するか否かの判断などは、検察のみに委ねられているからだ。
他の2判事は「警察はDPを結べるが、検察の承諾は必要」と判断し、エジソン・ファキン判事だけが「警察が独自にDPを行う権利はない。DPは検察だけが行える」と判断した。ファキン判事はLJ作戦関連裁判の担当判事だ。
実は、「被疑者と警察との間のDP」は既に3件結ばれている。ルーラ元大統領の選挙参謀だったドゥダ・メンドンサ被告と、メンサロン疑惑のマルコス・ヴァレーリオ被告のDPはSTFの承認待ちで、PT政権で財相や官房長官を歴任したアントニオ・パロッシ被告のDPは、第4地域裁の承認待ちだ。
STFの決定に対し、連邦直轄区検察局のヴラジミール・アラス検事は、「DPを行おうとする容疑者や被告が、検察と警察に二股をかけて条件交渉し、自分に有利な方とDP合意を結びかねない。犯罪者を利する決定」と批判している。
一方、全国連警警部協会(ADPF)のエジヴァンジール・デ・パイヴァ会長は、「最も重要な捜査手法の一つであるDPを行う権利を警察に与えないのは、理屈が通らない」とSTFの判決を支持している。
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