ホーム | ブラジル国内ニュース | 〃ラテン・アメリカは中国の新シルクロード〃」=中国の世界戦略に組み込まれたブラジル=農業、インフラに巨額投資=13年間で1100億ドル

〃ラテン・アメリカは中国の新シルクロード〃」=中国の世界戦略に組み込まれたブラジル=農業、インフラに巨額投資=13年間で1100億ドル

テメル大統領(左)と習近平総書記(右)(Beto Barata/PR)

テメル大統領(左)と習近平総書記(右)(Beto Barata/PR)

 ブラジルが陥っている最近の経済危機も、中国と米国の間で過熱する貿易戦争も、中国のブラジルへの積極的な投資姿勢を揺るがすものではないと、26日付ブラジル現地紙が報じた。

 ブラジルのインフラ事業に積極的に進出している中国企業、中国交通建設股份有限公司(CCCC)と協力関係にある投資銀行、モダル銀行の共同経営者エドゥアルド・セントーラ氏は、「中国人はどの国と友好関係を結ぶかを考えて、『では、その国に投資しようか』とは考えない。ある国に投資する事と、その国と友好関係を結ぶ事とは一体化している」と語り、「ブラジルはほぼ大陸と言えるほどの国土を持ち、国境紛争や、国際政治における主導権争いなどに巻き込まれていない唯一の国だと中国人は見ている」と、セントーラ氏は指摘する。
 ブラジル・中国商工会議所のケビン・タン会頭は、「中国はブラジルを、資金、技術、労働力があふれている国だと認識している」と語る。近年、中国側がもっとも力を入れて投資している電力産業がその好い例だ。タン氏は、「中国はブラジルの送電線網の経営権をドンドン買っている。それは中国が送電線の製造国で、送電技術や経営関係のノウハウを持っているからだ。中国は、世界最大の太陽光発電、風力発電設備の製造国でもある」と語る。
 昨今の米中の貿易摩擦の深刻化と共に、ブラジル農業ビジネスへの参画も中国は企図している。「中国にとって重要な物を生産している〃ある国〃(アメリカを指している)が中国に対して高圧的な態度をとったら、中国は対応策を考えねばならない。食糧や原材料の供給、運輸関係で見る限り、中国はブラジルを非常に信頼できる相手だと見ている」と同氏は続けた。
 格付会社ムーディーズ社のマリアンナ・ウォルツ氏も、「ブラジルは中国の世界戦略に組み込まれている」と語る。ムーディーズ社が25日に発表したレポートには、〃ラテン・アメリカ諸国は中国にとって新たなシルクロード〃との表現も出ている。
 中国政府は今年の年頭、ラテン・アメリカ諸国に数十億ドル単位で投資を行うという「一帯一路計画」を発表した。2003年から2016年までの間に中国がラテン・アメリカ諸国に投じた総額1100億ドルの投資の内、56・4%はブラジルに投入されており、同計画はブラジルにとって重みがある。
 民間会社の調査によると、中国企業は17年に106億ドルの投資をブラジルに行った。この数字には投資額非公表の計画は含まれず、実際の金額はより大きなものとなる。また、ブラジル企画省の計算では、今年1月から4月までの投資額は13億ドルで、これにも投資額非公表の計画は含まれていない。
 中国企業は今年も、ブラジル国内のインフラ整備計画へ投資する意欲を持っており、これらが実現すれば、今年の中国投資も昨年並になるが、法整備など、ブラジル政界のサポートが必要な計画も多く、全ての計画が年内に実現するか否かは不透明だ。