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《ブラジル》捨てる位ならば養子に=望まれない子を当局に譲渡=縁組待つ子供と希望像にズレ

養子縁組などに関する法律を審議している下院本会議(17年9月、Valter Campanato/Agência Brasil)

養子縁組などに関する法律を審議している下院本会議(17年9月、Valter Campanato/Agência Brasil)

 17年1月~今年5月に「子供を養子に出したい」と言って司法当局を訪れた母親は203人おり、3日に1度は子連れの母親が家庭裁判所などに支援を求めた事になると25日付フォーリャ紙が報じた。
 ペルナンブコ州レシフェ市の家庭裁判所を訪れた女子学生は、自宅で前日産んだ赤ん坊を抱いていた。田舎にいる家族は何も知らないが、出産後に兄弟が尋ねて来て子供の事を知られる前に、子供を安全な所に委ねようと考えたという。
 インターネットで調べたら、同市の「マイン・レガル」というプログラムが見つかり、子供を連れて来た。同プログラムは、児童青年憲章にある「合法的、または自主的譲渡」と呼ばれる行為を促すものだ。
 前述の203人という数字は連邦直轄区と10州からのデータだけだから、実際の数はもっと多いはずだ。ブラジルで最初に同種のプログラム「アコンパニャメント・ア・ジェスタンテ(妊婦への随行)」を導入した連邦直轄区では、51人の母親が合法的譲渡を行った。以下、セアラ州26人、ペルナンブコ州25人、サンパウロ州21人などが続く。
 合法的譲渡は余り知られておらず、子供を譲ったり、養子に出したりする事への偏見や抵抗感は根強い。だが、これは、強姦被害者や予期せぬ妊娠者、子供の父親や家族の支援が得られない人、麻薬常習者、経済力がなく子育てが困難な夫婦などに認められた権利だ。先の女子学生も、子供を捨てるよりと考え、権利を行使している。
 17年11月には妊婦や誕生に関する情報を機密事項とする事などを保障した法律が裁可され、より安全に権利が行使出来るようになった。この法律は子供と母親を保護し、子供との関係を偽って親権を申請する不当な養子縁組や捨て子、子供の売買、不当な中絶を防ぐ事が出来る。
 だが、合法的譲渡やそれを保障する法律がある事を知らない人は多く、養子縁組を望む夫婦や引取りを待つ子供達の情報を登録したシステムの枠外での不当な養子縁組も後を絶たない。
 合法的譲渡は、母親との面接、心理面のケアなどを経て、子育て環境の有無や子供を手放す意思の固さなどを確認後、養子縁組の手続きに入る。
 養子縁組を待つ子供達は、黒人と白人らの混血(褐色)49%、白人34%、黒人17%で、11~17歳が50%、兄弟ありも58%いる。他方、引取り手の希望は白人92%、褐色81%、黄色56%、黒人53%、先住民52%で、年齢は3~5歳49%、2歳以下29%、兄弟なし64%など、実態とかなり食い違っている。