ホーム | 日系社会ニュース | 《ブラジル》W杯惜敗 日本代表=観戦会、大歓声から咽び泣きに=ブラジル人取材陣も驚く熱烈応援=「ブラジルが雪辱を果たす!」

《ブラジル》W杯惜敗 日本代表=観戦会、大歓声から咽び泣きに=ブラジル人取材陣も驚く熱烈応援=「ブラジルが雪辱を果たす!」

試合終了後、泣き顔を隠して窓際にたたずむ男性

試合終了後、泣き顔を隠して窓際にたたずむ男性

 サッカーW杯日本代表戦の観戦会が2日、サンパウロ市の岩手県人会館で行われた。勝ち進めば日本対ブラジル戦が実現するとあって、日本が2点を先制した後半途中まで応援は一気に盛り上がった。その後、見る見る同点に持ち込まれ、終了間際に決定打を浴びると、会場は葬式のように沈黙となり、あちこちから嗚咽が聞こえ始めた。

 岩手県人会には日本代表のユニフォームや「必勝」ハチマキを身に着けた約60人が集まった。日本が好プレーを見せるたびに拍手や大歓声を繰り返し送った。今までの観戦会同様、現地メディアの取材陣がどんどん増えて10人ほども殺到、テレビカメラ3台が並び、熱心にインタビューを繰り返していた。
 通信事業会社に務め、駐在1年目の齊藤浩さん(45)は30年来の日本代表サポーター。これまでも日本代表の試合を国内外で観戦してきた。
 わざわざ半日休暇を取得し、ベトナム人の妻、グエン・テイ・タンさん(30)と岩手県人会の観戦会に訪れた。ユニフォーム姿の齊藤さんは試合前から、「ロシアに届くように応援します!」と意気込み、日本が2点目を入れたときには飛び上がって喜んだ。

悔しさからむせび泣く齊藤さんと抱擁する妻のグエンさん

悔しさからむせび泣く齊藤さんと抱擁する妻のグエンさん

 妻グエンさんは「私はあまりサッカーは好きじゃないの。でも主人が熱烈なファンだから私も応援するわ」と笑顔で話していた。
 試合終了後、会場の端で号泣する齊藤さんの姿があった。グエンさんが手で齊藤さんの涙をそっとぬぐい、優しく抱擁した。齊藤さんは「本当に悔しい。勝てると思ったんですけどね…」と嗚咽を漏らした。
 他にも涙を流す人がいて、葬式のように沈んだ雰囲気に。終了とともにユニフォームの襟元で顔を隠してむせび泣いた國場健実さん(37)は、「今は何も考えられないです」と呆然と話した。
 長岡宏一(ひろかず)さん(46)は頭にアフロを付け、顔を青くペイントし最前列で応援した。17歳のときにブラジルでサッカー修行をするなど、プロを目指していた時期もあったという。現在はアメリカに住み、ブラジル人とW杯を応援するために来伯した。
 「勝てる試合だった。もったいない。日本とブラジルの試合が観たかった」と悔しさをにじませつつ、「こういう経験を得て日本は強くなる」と結果を前向きに捉えた。
 県人会青年部の多田正樹フラビオさん(24、三世)は「いい試合だったからなおさら悔しい」と唇を噛み、「ブラジルが日本の雪辱を果たしてくれるよ」と期待を込めた。
 取材に来たTVガゼッタのレポーター、カルラ・ロデイロさんは「日本はブラジルや欧州と比べるとサッカーの文化が無い国。それなのに皆が一生懸命応援したり、負けて泣くなんて」と驚いた様子で話した。


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 観戦会はサンパウロ市の「カフェ喜怒哀楽」(Rua Sao Joaquim, 381)でも行われた。狭い店内に30人のサポーターが押しかけ、パンパンの状態で熱烈応援を繰り広げた。オーナーの佐藤浩香(ひろか)さんは「W杯効果、バツグンです」と笑顔を見せる。客が試合に集中していて注文数は伸びないが、「3カ月前にオープンしたばかりの店だから、店のことを知ってもらえただけでも嬉しい」と話した。
     ◎
 まだ日本代表が優勢だった途中まで、「カフェ喜怒哀楽」で応援していた客に「もし日本とブラジルが戦ったらどちらを応援するか」と尋ねてみた。
コーラスグループの仲間たちと訪れた二世の林田マリナさん(60代)は、「ブラジルを応援するわ。私はここで生まれ育ったんだもの。でも日本がブラジル以外の国と戦うときは日本を応援するわね」。
一方、同じく二世の和田正栄さん(60代)は「決められないわ。日本は両親の母国だし、息子が日本に留学しているの。でも、私はブラジルに住んでいるし、ここで教育も受けている…。どちらが勝っても嬉しいと思う」と話した。日伯試合が実現していれば、和田さんのように悩む日系人が多くいたかも?