ホーム | ブラジル国内ニュース | 《サンパウロ州》サトウキビの搾りかすから接着剤=洗っても取れない難物が宝に

《サンパウロ州》サトウキビの搾りかすから接着剤=洗っても取れない難物が宝に

 「ねー。どうしよう。いくら洗ってもプロペラにこびりついて取れないのよ」―。
 サンパウロ州内陸部カンピーナス市国立エネルギー・材料研究センター(CNPEM)の研修生だったナイマ・オーラ氏が、セルロース会社の廃材とサトウキビの搾りかすから強力な接着剤を開発したのは、こんな会話がきっかけだった。
 オーラ氏の話を聞いた国立ナノテクノロジー研究所研究員のルビア・・フィゲイレド・ゴウヴェイア氏が研究を始めようと決めてから1カ月後、二人はこれが最良という成分の配合に行き着き、特許もとった。自然の原材料で作った、無害で持続可能な接着剤は、国外でも特許を取得すべく、手続きに入る。
 この接着剤が製品化されれば、収益の半分はCNPEMに入り、残りの半分は開発者の二人で分けられる事になる。
 新開発の接着剤は、化学的な製法で作った接着剤と同等の接着力を持つ上、ラテックスとリグニン、ナノセルロースの三つの材料だけで出来る。
 「リグニンとナノセルロースは製紙工場やサトウキビの加工工場などから出る廃材、廃液中に大量に含まれているから、それを再利用すれば一石二鳥だし、安上がり」と保証するのは、開発者のゴウヴェイア氏だ。
 同氏によれば、ラテックスはゴムの木などから採取しなければならないが、新しい接着剤は、自動車産業や家具製造業、建設業、玩具製造業などで、幅広く利用できる。また、配合次第では、商用や家庭用などとしても使えるという。
 スザノ製紙セルロース社のリグニン・プロジェクト担当研究員のファビアノ・ロッソ氏によると、リメイラ市の工場から出るリグニンの3%(約2万トン)は、精製後に樹脂に加工し、製材工場などに売却しているという。残りは高温、高圧で処理して工場内で使うエネルギー生成に利用しているが、エネルギー用に使うリグニンを減らしたいと思っていた折でもあり、接着剤商品化の見込みさえあれば、リグニンの大半はそちらに回したいという。同氏はリグニンの新たな利用だけでなく、接着剤の製造、販売も見通している。
 現在製造されている接着剤の大半は、石油から精製された化学成分を含んでおり、健康被害も心配されているが、新しい接着剤はそういう心配がない。今後は、高温や低温への対応も研究する予定で、上手くいけばガラスの接着にも利用出来るようになり、用途が広がるはずだという。(4日付G1サイトより)