ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》第4地域裁の当直判事が突如のルーラ釈放令=二転三転の末、収監は継続=「全ての法的手段とる」とPT=テメル外遊中に一波乱?

《ブラジル》第4地域裁の当直判事が突如のルーラ釈放令=二転三転の末、収監は継続=「全ての法的手段とる」とPT=テメル外遊中に一波乱?

「ルーラを釈放せよ」と気勢を上げる支持者たち(Roberto Parizotti)

「ルーラを釈放せよ」と気勢を上げる支持者たち(Roberto Parizotti)

 【既報関連】連邦第4地域裁(TRF―4)の日曜当直判事だったロジェリオ・ファブレト判事が8日午前9時ごろ、収賄と資金洗浄の罪で4月7日から収監されているルーラ元大統領に人身保護令(HC)を適用の上、釈放するよう命令した。20年来の労働者党(PT)シンパだった同判事が日曜日に〃ぬけがけ〃で出したルーラ釈放命令で、司法界は大混乱に陥った。釈放を巡る判断は数時間単位で二転三転した後、同日午後7時半にトンプソン・フローレス同地域裁長官が出した「ルーラの釈放を認めない」との判断で一応の決着を見たが、火種はまだ燻っていると、9、10日付現地各紙は報じている。

 ファブレト判事のHC適用の根拠は、ルーラ元大統領が、PT公認の今年の大統領選候補であるというものだった。
 この決定に最初に異議を唱えたのは、クリチーバ連邦地裁のセルジオ・モロ判事だった。同氏は「ルーラ有罪はTRF―4の複数判事による決定で、最高裁でも『2審有罪後の刑執行は合憲』と判断されている。ファブレト判事はHCを出せない」と異議を唱えた。
 TRF―4の当直担当だったジョゼ・オズマル・プメス検察官の要請で、ラヴァ・ジャット作戦関連案件報告官のジェブラン・ネット判事が、ルーラ氏に出されたHC差し止めを決めたのは午後4時13分。モロ判事とジェブラン・ネット判事の判断後にも関わらず、ファブレト判事は午後4時過ぎに再度ルーラ釈放命令を出したが、午後7時半にトンプソン・フローレスTRF―4長官がHC差し止め決定を出したため、ルーラ氏釈放はならなかった。
 ルーラ釈放を巡る混乱は政界にも波紋を巻き起こし、左派を中心に釈放に賛成する声、中道、右派を中心に釈放に反対する声が沸き起こった。また、カルメン・ルシア最高裁長官も、「司法の序列を乱してはならない」とコメントした。
 連邦検察庁は9日、連邦高等裁判所(STJ)に対し、ルーラ氏のHCはSTJで扱うことと、連警には下級裁判所が出すルーラ釈放のHCを実行するのを禁じることを要請した。
 8日の混乱から一夜明けた9日、PTもルーラ釈放への意欲を見せた。「考えられる全ての法的手段をとる。我々の弁護士はすでに戦略を練り始めている」とPT党首のグレイシー・ホフマン上議はサンパウロ市で語った。
 PT関係者が望みをかけているのは、今月中にテメル大統領が3度外遊し、カルメン・ルシアSTF長官が臨時で大統領職に就く期間だ。STFは現在休廷中で、長官が当直を務めているが、PT寄りのジアス・トフォリSTF副長官が長官職を代行する際に、ルーラ収監の正当性を裏付けている「2審有罪判決後の刑執行は合憲」の是非を問い、トフォリ判事がそれを取り上げれば、逆転は充分に可能だと一部のPT関係者は見ている。