【既報関連】ブラジル連邦議会(上院と下院)は11日、トラック輸送の最低運賃を定めた暫定令(MP)を承認した。このMPでは、5月21日から6月4日までのスト期間中に、道路からトラックを取り除かなかった個人トラック業者や、ストを支援した運送会社に科された罰金を免除することも定められており、テメル大統領の裁可待ちと、12日付現地紙が報じた。ただし、総弁護庁(AGU)は、裁判所が出した罰金をMPで免除する事は憲法違反としている。
今回のMPで定められた最低輸送運賃以下で物資の輸送契約を行ってしまった業者への罰金も、5月30日から7月19日までの契約の場合は免除される。MPにより罰金が免除される会社は151社、免除額は7億1510万レアルに上る。
「最低輸送運賃は輸送原価を反映したものでなければならず、燃料であるディーゼル油の経費や高速道路の通行料も含めた、国家陸路輸送庁(ANTT)の定める規則に基づいて算定、開示される」とMPは定めている。ANTTは輸送距離や、特定の物資には特別料金を加えるなどして最低輸送運賃を決める。ANTTはディーゼル油価格の変動が起こるたびに最低輸送運賃を更新し、発表する必要がある。
5月21日に始まり、ブラジル全土の物流を麻痺させたトラックストの終結を図るため、テメル政権は大きな譲歩を強いられた。最低輸送運賃の設定もその一つだ。
トラック業者は「輸送運賃を買い叩かれては、赤字になってしまう」の言い分で、最低輸送運賃を定める事を要望。テメル大統領も5月末の交渉時にそれを了承したが、今度は農業界や産業界から「輸送費が上がってしまう」と、反発の声が挙がり、合意成立に至れずにいた。
6月にはルイス・フクス判事が、最低輸送運賃の合憲性の判断が出るまで、また、テメル大統領の出したMPが有効となるか差し止めとなるかの判断が出るまで、最高裁より下級の裁判所でのトラックスト関連訴訟を差し止める決定を下した。
MPには、最低輸送運賃に違反した業者には、運送業者への賠償責任を課す事も明記された。
「罰金取り消し」提案議員は運送会社社長?
「ストに参加した運転手やストを支援した会社への罰金免除」の提案者はネルソン・マルケゼッリ下議(民主運動・MDB)だ。免除の対象は、連邦国道警察が科した交通違反による罰金と、「スト解除命令に従わなかった」などの理由で裁判所が科した罰金の双方が含まれる。マルケゼッリ下議は運送会社のオーナーだが、「個人の利益のために罰金免除を提案したのではない。今は会社も息子に譲っている」としている。
しかしながら、議員からは罰金免除は大統領裁可時に拒否権が行使される可能性があるとの声も出ている上、AGUも違憲判断を出している。