ブラジル保健省発表のデータによると、2016年のブラジルの乳児死亡率は14‰(パーミル・出生児1千人あたりの数値、以下同)で、2015年の13・3‰より5・2%上昇したと16日付現地紙が報じた。
乳児死亡率は、生きて生まれた新生児1千人につき、生後1年以内に亡くなった小児の割合を示す。ブラジルでは、1990年に47・1‰を記録して以来、年平均4・9%減少してきたが、16年の「前年比増」は、26年間で初の現象だ。
アマパー、アマゾナス、バイーア、パラー、ピアウイ、ロライマの6州での16年の乳児死亡率は19・6‰で、15年より14・6%上昇した。上昇率はブラジル全体の5・2%の3倍近くになる。
乳児死亡率が低下したのは、ロンドニア、アクレ、リオ・グランデ・ド・ノルテ、アラゴアス、パラナ、サンタカタリーナの6州と、連邦直轄区だけだ。
サンパウロ州は11・09‰で、州別で5番目に少ない数値だったが、それでも16年は15年より乳児死亡率が上昇した。
保健省では、乳児死亡率が上昇した理由は大きく分けて二つあると分析している。ジカ熱と、経済的要因だ。
15年から16年にかけて、ブラジルでは東北部中心にジカ熱が流行した。「妊娠中に母親がジカ熱にかかると小頭症の子供が生まれる可能性が高まる」との情報が広まり、妊娠を控える傾向も見られたが、それとは別に、妊娠中の母親がジカ熱にかかったことによる新生児死亡件数も増え、乳児死亡率を押し上げた。
経済的要因とは、ブラジルを襲った不況により、特に底辺層の衛生状況が悪くなったこと、自治体の社会福祉政策や、公共医療政策の予算が打ち切られたことなどだ。これにより、本来なら防げるはずの乳幼児が下痢や肺炎にかかって亡くなるケースが起こっている。
国際連合児童基金(ユニセフ)の調べでは、15年から16年にかけてのラ米諸国の乳児死亡率は18‰で、世界全体では41‰だ。
また、16年に生後5年以内に亡くなった乳幼児の数は3万6350人で、その内1万9025人は生後7日以内に亡くなった。また、15年から16年にかけて、下痢が理由で亡くなった5歳未満の小児の数が、532人から597人へと、12%も増加した。
ブラジルの子供の教育、医療、文化レベルの向上を目的とするAbrinq財団のデニージ・カザリオ所長は、「最低限の公共医療を支える部門の予算削減は、『国家の収支バランスを保つため』などと言い訳しても許されるものではない。貧困層にとって、最低レベルの公共医療政策は死活問題だ」と語る。