16日発行の科学雑誌「サイエンティフィック・リポーツ」が、バスやトラックはサンパウロ大都市圏を走る車両の5%のみなのに、大気汚染物質の約半分を排出しているとのサンパウロ総合大学(USP)物理研究所の研究結果を公表したと17日付ブラジル国内紙が報じた。
ディーゼル油を燃料とするバスやトラックが排出する汚染物質と、ガソリンやエタノールを燃料とする乗用車やバイクの排出物質は、エタノールの成分を分析して区別された。車種を分けて汚染物質を分離、分析した研究は初めてだ。
報告者達は、簡便で迅速、廉価な大気浄化の方法はバスの排気管にフィルターをつける事との提言も行った。他の6人の研究者と共に調査を行った物理研究所のパウロ・アルタクソ氏は、「フィルター装着には長期展望にたった公共政策が不可欠だ」と言う。
同氏によれば、バス用のフィルターは一つ1万~2万レアルで、最大で95%の汚染物質を除去出来るという。現在走行中のバスはサンパウロ市だけで1万4500台で、全てに装着すれば3億レアルの出費となるが、「大気汚染で、毎年、何千人もの死者や病人が出る事を考えれば、大きな額ではない」と同氏は言う。
近年は大気汚染が悪化し、鼻炎やセキなどの呼吸器疾患や血管障害を起こす人や、ペットの入浴や車庫の掃除の回数が増えたという人が増えている。大気汚染物質の筆頭はブラック・カーボンとかフマッサ・プレッタとか呼ばれる黒い粉塵で、その47%は、バスやトラックが使うディーゼル油の不完全燃焼で出る。
USP研究員で、フランスの大学でも研究を続けているジョエル・ブリット氏は、毒性が非常に高いトルエンやベンゼンなどの粒状の物質も含む、「大型車両が排出する大気汚染物質の多さに驚いた」と言う。
今回の調査はサンパウロ市ドットール・アルナルド大通りにあるUSPの施設の屋上に機械を設置し、3カ月間をかけて大気の観測と分析を行った。同施設はサンパウロ市で最も高い地区にあり、周辺地域の大気も流れて来る。
研究員達は、鉄道輸送に切り替えれば汚染物質の排出量は減る事も提言した。また、ディーゼル油の価格が安い事も、汚染物質の排出量が少ない燃料への切り替えを妨げていると批判している。