私は歴史が苦手である。歴史を学ばなければ人は成長しないと言われており、過去の出来事を知ることは非常に大切で、現在をそして将来の予想や計画を立てるときには欠かせない。そのためか人生でずいぶん損をしているにも拘わらず歴史に類する本を読むことは非常に稀である。
記憶力が弱いということに加えて時代考証も苦手ということに尽きる。物覚えが悪いことで一番困ることは人の名前を覚え切らないことではないだろうか。今出会って話をしたのに、名前を誤って覚えたり忘れてしまい大失敗することおびただしく、予防の手段として、出来る限り手帳に書き留めることにしている。
前書きが長くなったが、ふとした機会からニッケイ新聞社が発刊している『日本文化』第8巻「移民史の先駆者たち」を読む機会に恵まれた。
日本独自の文化や歴史が大文字の日本語(ルビ付き)とポルトガル語翻訳文の両語で掲載され、日本を理解するためにシリーズとして発行、今までに8巻が発行されている。
私の幼少年時は戦中、戦後で本を読む機会が少なかったため本に飢えていた。その経験から、孫にはぜひ本を読む習慣をつけてもらうために、年令に合わせた本を毎月1冊プレゼントしている。だからこの本のことも、前々からどんな内容なのか気がかりであった。
「移民史の先駆者たち」は全254頁、日本語143頁、ポルトガル語111頁で字が大きいため大変読みやすい。
第1章では北米で活躍したのちブラジルへ転住してアリアンサ移住地の重鎮だった瀬下登氏。
第2章はなんと生涯2千勝無敗を誇った伝説の武道家コンデ・コマ。
第3章は天然ゴムに終止符を打ったアマゾンにジュート栽培の産業を興した立役者尾山良太。
第4章はセイロン島から紅茶の種をかすめ、コーヒー帝国に「紅茶の都」を築いた岡本寅蔵。
第5章では婦人雑誌の全国美人投票で一位になったミス日本を口説き、新妻を連れ、日本屈指の財閥を去ってブラジルに耕地を築いた後宮武雄。
最終章、第6章はコチア産業組合創立者の一人、熊本県の郷里に奨学制度を要請し多額の寄付や、県連会長として第6回までの初期移民訪日団73人を私費で訪日させるなど慈善事業に献身した中尾熊吉。
6人の先駆者の活躍ぶりが簡単明瞭に書かれてあるのが嬉しい。
日系コロニアの著名人ばかりで、歴史や文化、社会の出来事をとおして、日本を分かりやすく理解するために書かれた良書といえよう。
歴史に弱い私が、なかなか手にしない本を一気に読むことができたのは初めてで、私にも分かりやすく易しく書かれているから。ぜひ子供や孫に読んでもらいたいと思っている。(7月15日記)
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