カルメン・ルシア最高裁(STF)長官の後継として9月に長官に就任するジアス・トフォリ判事には、年内に「2審で有罪判決が出た後の禁固刑執行の是非」問題を大法廷審理の議題として取り扱う意志がないことが明らかになったと、19日付現地紙が報じた。
「2審後の刑執行を是とする」の判断は、ルーラ元大統領の服役を正当化する重要な論点だ。元大統領は今年1月、連邦第4地域裁(TRF4)で収賄と資金洗浄の罪で12年1カ月の実刑判決を受け、上告棄却後の4月7日から服役している。
トフォリ判事自身は2審後の刑執行の是非を問い直すための再審理実施に賛成だが、「STFは今年、既に充分、同件に関する議論を尽くした」と認識している。
今年4月に行われた、ルーラ氏への人身保護令適用の是非を問うSTF全体審理では、6対5で「2審有罪判決後から刑の執行を認める」(=人身保護令を適用しない)の結論に達していた。
ルーラ元大統領を10月の大統領選挙に担ぎ出したい労働者党(PT)の基本戦略はこれを覆すことだが、大統領選への立候補受付期限は8月15日に迫っている。今月8日には、TRF4の当直で元PTの判事がルーラ氏の釈放命令を出し、それを別の判事が否定するという混乱が生じるなど、ルーラ氏釈放を目指す勢いは増している。
カルメン・ルシア長官は、2審後の執行に賛成で、4月の審理後は、同件を大法廷の議題にあげることを拒んでいる。
18日にはルシアノ・マイア連邦検察庁長官代行も、STFに送った意見書の中で「2審後の刑執行」を擁護した。同意見書は、ブラジル共産党(PCdoB)が起こした憲法直接訴訟(ADC・特定の事柄、法律などが憲法に抵触していないかと、最高裁に直接判断を仰ぐ訴訟)のために作成された。
2審後の刑執行反対派のSTF判事らは、トフォリ次期長官が、10月の統一選挙後か来年、同件の再審理を取り扱うことを期待している。
4月の審理では、「2審後の刑執行賛成」だったメンデス判事が元大統領への人身保護令適用賛成に票を投じた(立場を変えた)が、ローザ・ウェベル判事は個人的には刑執行に反対だが判例(昨年の判決)を遵守との立場をとり、「2審後の刑執行を是とする」判断が維持された。
2審後の刑執行反対派は、ルーラ元大統領への人身保護令適用についての審理としてではなく、2審後の刑執行という視点での訴訟の審理という形で扱えば、ウェベル判事が再び反対に票を投じるのではないかと期待している。最高裁大法廷での判決は、全ての裁判に当てはまる判例となる。
そのウェベル判事は18日、ブラジル自由運動(MBL)が13日に選挙高裁に出した、「出馬登録の前にルーラ元大統領は出馬できないことを選挙高裁が宣言する」ことを求める要請を棄却した。