15日にサッカーのW杯が終わった。今はセレソンの雪辱優勝はならなかったが、本紙読者的にとっては日本代表のこれまでにない大活躍が強く印象に残ったことだろう。セレソンを破った強豪ベルギーに対し、一時は2点リードし、最後まで互角に戦ったゲームは、日本サッカー史に記念すべき一頁を加えたこととなった▼あれ以来、日本代表で活躍した選手には欧州強豪からの入団のオファーが殺到しているという。今回の大会では、乾や柴崎といったスペインの一部リーグでテクニックを研いた選手が大活躍したが、そのレベルをさらにあげるチャンスが舞い込んできた、というわけだ▼今のこのタイミングでJリーグのレベルもあげていただきたいが、コラム子としては、今こそブラジルサッカー界がいま一度、日本のサッカーの向上に貢献するタイミングではないかと思う▼Jリーグが発足された90年代前半から半ばにかけて、ブラジルの日本サッカーへの貢献は大きなものがあった。80年代のブラジルのサッカー王、ジーコをはじめ、やれドゥンガだ、レオナルドだと、現役のセレソン・クラスの選手が次々と、世界的には無名な日本のクラブに入団。サッカーの底上げを手助けしてもらったものだった▼ただ、それから約20年後、ブラジルからの日本への選手派遣は相変わらず多く、Jリーグの外国人選手の中でも一番多くはある。だが今や、それらの選手はブラジルで実績をあげられなかった本国では全くの無名選手ばかり。今やブラジル・サッカー連盟(CBF)にとっては、バブル経済も遠くになりにけりな日本よりも、経済成長で羽振りの良い中国や石油富豪がバックについているサウジアラビアやアラブ首長国連邦に好選手を送る方が商売として儲かる話となっていた▼今回のW杯での大躍進は、日本にとって待望久しい挽回の大チャンスだ。ただでさえ、中国リーグが外国人出場選手枠を1チーム3人までに制限し、中国を体験したブラジル人選手の中から中国での生活に不満を洩らすことも少なくなくなっていた矢先だっただけに実に好都合だ▼時を同じくしてJリーグでは、ヴィッセル神戸がイニエスタ、サガン鳥栖がフェルナンド・トーレスという、2010年W杯を制覇したスペインの名選手を獲得するという、同リーグにとって久々の大型補強を行なったばかり▼ブラジルからも昨年の末に、昨季のブラジレイロン(全国選手権)の最優秀選手および得点王の前コリンチャンスのジョーが名古屋グランパスに入団したが、このたびジーコが、古巣でもある鹿島アントラーズのテクニカル・ディレクターとして就任することも発表された。今現在、中国に渡っている元セレソン経験選手や、欧州に行って活躍するには年を取りすぎたタイプの選手を日本に振り向かせるのに今ほど良いタイミングはない▼ただでさえCBFの中国やアラブへの選手の派遣は「金満主義」と批判も強かった。それよりは今回のW杯で「実力的にも侮れない国」に選手を送る方が、ブラジルのサッカー・ファンの印象も良くなると思うのだが▼そして、うかうかしてもいられない。なぜなら今後、Jリーグにはもう一つ強敵がいるからだ。それが米国のメジャー・リーグ・サッカー(MLS)だ。米国は建国250周年にあたる2026年にW杯を開催する。それに向けて間違いなくMLSの強化に走るはず。選手の争奪戦でも間違いなく積極的になるであろうから、Jリーグも負けてはいられない。そしてCBFの関心がMSLに向かう前に、日本としてはブラジルから良い選手を獲得しておきたいところだ。(陽)