ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》三権の混乱が企業活動妨害=大統領選候補者に「リスク表」を配布=「まるで幽霊列車」の表現も

《ブラジル》三権の混乱が企業活動妨害=大統領選候補者に「リスク表」を配布=「まるで幽霊列車」の表現も

最高裁のレヴァンドフスキ判事(Carlos Humberto/SCO/STF)

最高裁のレヴァンドフスキ判事(Carlos Humberto/SCO/STF)

 ブラジルでは、連邦政府、連邦議会、司法の3者が矛盾する動きをとっており、インフラ投資を停滞させていると23日付現地紙が報じた。
 ブラジル基礎工業・社会インフラ産業会(Abdib)は、道路、下水、港湾、空港整備事業、エネルギーなどの諸分野で法的リスクを抱えている事業20件をリストにし、「次政権の抱える課題」として、大統領選の出馬予定者に配っている。Abdibは、選挙が近いことと、テメル政権が弱体化していることが、事業の不確実性を高めているとしている。
 全国工業連合(CNI)戦略政策部長のジョゼ・フェルナンデス氏によると、プロジェクトの法的リスクが明るみに出る事で、企業が事業契約をまとめる際のコストが高まっているという。
 同氏が挙げた例の一つは、5月に発生した全国トラックストを受けて、政府がトラック運転手側に最低運送賃、料金表の制定を約束したのに、その後の実務レベルで揉めて、最高裁判事の調停も難航した件だ。同件は議会承認に至ったが、事前の話し合いに現場の技術者の意見などが反映されていない。同氏は、「こうした矛盾をはらんだ法律は無数の訴訟を引き起こす」と語っている。
 政府、議会、司法の動きが企業活動を脅かしているもう一つの例は、6月に最高裁リカルド・レヴァンドフスキ判事が下した、「議会承認なしでの公社民営化禁止」の予備判決だ。
 この判決は石油公社ペトロブラス社の精油所売却オペレーションを差し止め、エレトロブラス民営化の動きも止めるという、政府や公社の意向に反する結果を生んだ。経営コンサルタント会社のクラウジオ・フリシュタック社長は、レヴァンドフスキ判事の決定は不当だとしている。
 また、公社への政治家の行き過ぎた介入を防ぐために2年前成立した、政治家が任命した人物や親族が公社職員に就任できる人数の上限を決めた法律を、統一選直前期の今、議員たちが骨抜きにしてしまった。
 Abdibのヴェニウトン・タジーニ会長は、「政府に政局調整力がなく、しっかりまとまっていないから、他の諸機関が肥大化している。互いの権限を行使する範囲が重なり、それぞれに矛盾した決定を下す傾向が生まれてしまった。まるで〃幽霊列車〃に乗っているようで、恐怖が絶えない」と語る。
 国内屈指の大手弁護士事務所の共同経営者、アレシャンドレ・ベルトルジ氏は、法的リスクを抱えるプロジェクトは融資も受け難く、金利も高くなってしまうことを、返済履歴の芳しくない人物や会社が融資を受けるのに苦労する実情に例え、「法的リスクや、司法判断が出るのに時間がかかることが、ブラジル経済の発展を妨げている」と語っている。