4月以降、大統領辞任を求める抗議行動が繰り返されているニカラグアで23日夜、医学部6年生のブラジル人女子学生が研修の帰りに射殺されたと24、25日付ブラジル国内紙、サイトが報じた。
事件が起きたのは、23日午後11時半頃で、同国の首都マナグアの警察病院での研修(当直勤務)後、帰宅途中のライネイア・ガブリエレ・リマさん(31)の車が機銃掃射を受けた。
現場は政府高官なども住む高級住宅街で、リマさんが学んでいたアメリカナ大学のエルネスト・メジナ学長は、与党のサンディニスタ民族解放戦線の会計で、最近まで石油採掘や建設に関連する公社2社の役員だったフランシスコ・ロペス氏宅の警備に当たっていた民兵に射撃されたとの見解を明らかにした。
リマさんは自分で車を運転中で、機関銃の弾が胸部に命中。メジナ学長によると、弾は心臓と右肺を貫き、肝臓に達していたという。リマさんは後方を走っていた恋人によって軍病院に運ばれたが、約2時間後に死亡した。恋人はショック状態に陥り、入院したが、退院後、唯一の目撃者として事情聴取を受けた。
同国では4月以降、大統領退陣を求める抗議行動が頻繁に起きており、体制派の軍や警察、民兵組織が武力によって抗議行動を抑圧。同国の人権保護団体によると、4月18日~今月10日だけで、市民306人、警察16人、民兵28人、軍兵士1人の計351人が死亡した。内289人は射殺で、大半が頭や胸、頚部を撃たれている。
外国人の死者は6月に死亡した米国人男性に次ぎ、2人目だ。リマさんが抗議行動に参加した事はないが、マナグアは実質的な外出禁止令下にある。メジナ氏によると、彼女は覆面をした人々による検問で停車しなかったといい、危険人物とみなした民兵が機銃掃射を加えた可能性が高い。
リマさん殺害の報を受けたブラジル外務省は24日にブラジル駐在ニカラグア大使から事情を聞く一方、同国政府に事件解明と責任者への懲罰を求めた。また、同国の状況や政府の対応について確認するため、ニカラグア駐在ブラジル大使も召還した。ブラジル大使の帰国日程は未定だが、ニカラグアの治安が極度に悪化した事もあり、リマさんは研修終了後の来年、ブラジルに帰国する予定でいたという。