【既報関連】ロライマ州連邦地裁のエウデル・バレット判事が5日に出した、同州へのベネズエラ人難民の入国禁止令は、6日に一旦実行されたが、第1連邦地域裁(TRF―1)のカッシオ・マルケス副長官が同令を差し止めたため、7日午前に国境が再開されたと、6~8日付ブラジル現地各紙・サイトが報じた。
入国禁止令は大きな反響を呼び、6日にはブラジル政府人権局のグスターヴォ・ロッシャ長官が「テメル大統領も国境閉鎖は受け入れられないとしている」とした上で、外国人の人権と基本的支援へのアクセスを保障することは大切との声明を発表した。
ローザ・ウェベル最高裁判事は6日、「国境閉鎖を決められるのは最高裁だけ」とし、入国禁止令をロライマ州地裁に差し戻した。連邦検察庁や総弁護庁も国境閉鎖に反対する意向を表明した。
これを受け、第1連邦地域裁(TRF―1)のカッシオ・マルケス副長官が7日に入国禁止令を差し止めたため、7日の午前9~10時前後に国境閉鎖が解かれた。
国境が閉ざされていた14時間(「17時間」の報も)、ブラジル入国を望み、国境まで来ていたベネズエラ人の間には絶望感が広がった。また、バスで国境を越えてブラジル内の学校に通っていたベネズエラ人の子供たちも入国を許されなかったりしたため、国境付近に住むベネズエラ人たちが抗議行動も起こした。
国境付近でタクシー運転手として働くヴァウテヴィ・デ・ソウザさん(44)は、「ブラジル人はベネズエラに行けるのに、ベネズエラ人はブラジルに入れなかった。これは差別だ。私はこんな状況を目にしてとても心が痛んだ。『ブラジルに逃れたい』と長い時間をかけて国境にたどり着き、食べ物を買う金さえ尽きた人が、入国を許されなかった」と語る。同氏によると、国境が夜から早朝にかけて閉じられるのは常で、難民が国境で一夜を過ごすこともよくあるが、今回は夜が明けても、入国できるかがわからず、戻れと言われる可能性もあった。
国境再開後も混乱は終わらなかった。ベネズエラ人は入国手続きの際、予防接種用の長い列に入らねばならなかったのだ。
カルロス・マルーン大統領府総務室長官は、「ロライマ州にベネズエラ難民が押し寄せて大変な状況にあることは確かだが、連邦政府が入国禁止という安易な手段に逃げることはない。ブラジルは伝統的にそんな国ではない」と政府の立場を強調した。
国連も7日、「国境閉鎖を止めさせた、ブラジル最高裁の判断を賞賛する。ブラジルはこれまでベネズエラ難民その他の移民たちの入国を制限せず、彼らに基本的支援を与えてきた」との声明を発表した。