7月から施行された日系四世受け入れ制度について、下地幹郎衆議院議員(日本維新の会)による説明会「日系四世受け入れのための新制度の概要と展望」が5日(日)午後、サンパウロ市文協で行なわれた。昨年7月に引き続き2回目の公聴会となった。下地衆議は本制度に条件をつけた理由を説明した上で、「皆さんの意見が届けば制度が変わる可能性がある」と意見提出を求めた。在サンパウロ総領事館によれば、同日現在で同館では一件も新ビザを発給していない。
下地衆議は「まずは制度スタートが最優先だった。四世の皆さんを丁寧に受け入れたい。だから条件がついた。それを理解して。皆さんの声を聞きながら、これからより良い制度にしていきたい」と熱く語りかけた。
家族帯同不可となったことに関し「家族と一緒が良いのは、私達も重々認識している」とした上で、四世本人がまず日本の生活に慣れる期間を設ける意味でその条件を設定したと説明した。
日系四世が入国前に求められる日本語能力N4の条件に対し、「来てから苦労するのでなく、来る前に苦労して、来日後に充実した生活をして欲しい。N4があった方が仕事や勉強、生活面で様々な機会が広がる」と必要性を訴えた。
中国やミャンマー、ベトナムからの外国人労働者の失踪者が年間1万人いることに触れ、「職場の日本人との意思疎通ができないことが大きな失踪の原因。事実、日系三世までの制度ではその問題がたくさんあった。それを再発させないためにこの条件をつけた」と説明し、加えてこの四世ビザ制度の特色である「受け入れサポーター」の重要性を強調した。
サポーター一人につき二人までの四世を引き受け可能。サポーターの連絡先は法務省のサイトに公開され、四世本人から連絡をとれば、就労先も紹介してくれる。日本在住の親(三世)は、四世である子の受け入れサポーターになれることも確認された。
ただし、日本側のサポーター登録の広報が遅れている。なお、この制度では派遣会社もサポーターも仕事仲介料をとることが禁止されている。
下地衆議はこの制度について「技能実習制度とはまったく違う考え方によるもの。四世に日本を好きになってもらうための制度」と繰り返した。
質疑応答では県連の山田康夫会長が質問に立ち、日本語能力の壁や四世以降にも三世までと同じ制度が適用するよう意見を出した。下地衆議は「日系五、六世の方々も来やすくなるよう、まずはこの制度を成功させたい」とした。
四世らも積極的に質問に立ち、年齢や日本語能力制限への疑問を次々に語った。「日本語の代わりに英語能力では」「空手の段位など日本文化への習熟度を証明できる人は滞在を延ばせないか」などの提案も出された。
下地衆議は「制度利用者数上限は4千人。この数に達すれば制度が継続される。皆で成功させましょう」と呼びかけた。まずは2千人のサポーターが必要となる。
参加者のサントス英治さん(四世、22)に話を聞くと、日本生まれだという。中学卒業後に単身でブラジルに渡り、リオ・グランデ・ド・スル州のサッカーチームで選手として活動。昨年膝の故障により選手生命を絶たれ、今は日本に戻ることを考えている。「家族はみな日本、僕も日本のほうが長い。これから日本語能力試験を受けて日本に行き、大学にも通いたい」と語った。
マルレーネ・コスタ・コウガさん(48、三世)は「子供2人は日本で生まれ育った。だから戻りたがっている。四世受け入れ制度は彼らの希望。ぜひ利用しやすくして欲しい」と期待した。
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下地幹郎衆議院議員は昨年の講演時に「120歳までいける」と語ったことから、参加者は「年齢制限はゆるい」と理解していたが、現実の省令は「30歳まで」と厳しい制限が。それに関して「31、32歳で利用できないのはおかしいという声がブラジルから多数上がれば日本側も検討する」との可能性を同衆議は示した。日系四世受け入れ制度についての意見や要望は、在サンパウロ総領事館の査証班(メール=cgjvisto@sp.mofa.go.jp)まで。法務省のサイトで公開予定の受け入れサポーター一覧の公開時期は未定。一定数の応募があり次第速やかに公開予定とのこと。