農林水産物・食品の輸出促進を含めた経済関係強化のために来伯中の宮腰光寛内閣総理大臣補佐官は21日、ブラジル政府が福島県産品に課していた輸入規制を撤廃したと発表した。これにより南米での東日本大震災の原発事故による食品への輸入規制は完全撤廃となった。ブラジル日本商工会議所やサンパウロ州工業連盟(FIESP)からの要望を受けて、日本・メルコスールEPA(経済連携協定の)交渉開始にも意欲を示した。
11年3月の東日本大震災に伴う原子力発電所事故を受け、ブラジル政府は関東・東北地方の12県の食品に対して輸入規制を開始した。12年12月の大幅緩和で11県は解除されたが、それ以降も福島県産の食品に限っては、放射性物質検査証明書や産地証明書の提出が義務付けられていた。
宮腰補佐官は20日、首都の国家衛生監督庁(Anvisa)を訪問し、フェルナンド・メンデス・ガルシア・ネト長官代理が規制撤廃の書類に署名。翌日には官報に掲載され発効となった。
21日、JHで開催された日本食の普及イベント『和牛と泡盛の夕べ』で記者会見に応じた宮腰補佐官は、「南米諸国で全ての規制が完全撤廃された意味は極めて大きい。これにより全く何の違和感もなしに福島県の食品が並べられる」とブラジル政府に謝意をのべた。
福島県産食品に輸入規制を課しているのは25カ国・地域になった。宮腰補佐官は「規制緩和の動きは加速している。日本政府は他国より厳しい基準で放射能検査をしており、科学的根拠に基づき緩和・撤廃が着実に進んでいる。政府としても全力を挙げて取組んでゆく」と語った。
同イベントでも紹介された福島県会津喜多方の銘酒、大和川酒造「弥右衛門」を輸入販売するニッポン・ベビーダス社の川添博社長(ブラジル長崎県人会長)は「検査証明書で問題がないというのと、それが必要なしというのは大違い。これにより確実に風評被害もなくなり、信頼向上に繋がるはず」と期待を滲ませた。
復興支援と風評払拭のため県連日本祭りの福島県人会のブースでは、大和川酒造の日本酒の営業販売に力を入れてきた。昨年は、同県人会百周年のため来伯した内堀雅雄県知事もJHでセミナーを開催するなど、日系社会も一体となって支援してきた。川添社長は「小さなことの積み重ねでここまでたどり着いた」と笑みを浮かべた。
宮腰補佐官は「TPP11やEUとの経済連携協定が、今後締結するEPAの基準になる。メルコスールがこの高い水準に耐えうるかという課題もある」との認識を示しつつも、「メルコスールとの経済関係の拡大は日本政府にとっても大きな課題。日メルコEPAを前に進めるべきとの声をしっかり受けとめて、やっていきたい」と意気込みを語った。
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宮腰内閣総理大臣補佐官は富山県出身の自民党衆議だが、離島訪問を趣味で、泡盛好きでも有名とか。600年の歴史を誇る泡盛は、年月をかけて熟成させる伝統をもつ日本では唯一の古酒。当日は、泡盛をベースとしたカイピリーニャなどの試飲会が行われ、「泡盛はカクテルのベースとしてもとても合う。二日酔いもしないので、ぜひしっかりと味わって。継続的にブラジルで手に届くようにやっていきたい」と熱っぽく語っていた。今回、サンパウロ市内の沖縄料理店「でいご」を訪れ、沖縄県人会関係者とも懇親を深めたそう。海外出張の際には、決まって沖縄料理店を探して食事をとるといい、島袋栄喜会長も「泡盛に非常に詳しく、私たちよりも沖縄の隅々まで歩かれている」と感激したほど。今年6月にタイを訪問した際にも、それに合わせて泡盛のイベントを開催し、泡盛の魅力を発信したそう。まさに泡盛大使さながら?!