ブラジルでは不況のために市民の債務不履行が増加し、銀行による不動産差し押さえが増加していると、27日付現地紙が報じた。2014年以降、住宅ローン返済の延滞が理由で、連邦貯蓄銀行(Caixa)、ブラデスコ銀行、サンタンデール銀行、イタウ・ウニバンコ(イタウ)銀行、ブラジル銀行の5大主要銀行が差し押さえた住宅(一軒家、アパートを含む)は合計7万軒で、総評価額は115億レアルに上る。
差し押さえ住宅に売れ残り住宅を加えた総評価額は137億レアル。この額は14年初めから今年上半期末までの4年半で、ほぼ8・5倍に膨れ上がった。今年上半期の住宅差し押さえの総額だけで14億8千万レアルだ。
今年6月末の時点でCaixaは、4万7千軒、総額91億レアル分を差し押さえている。5大銀行の中では件数で67%、総額では79%を単独で差し押さえた計算だ。だが、同行が16年末に抱えていた差し押さえ住宅は今の半分以下、2万3千軒にすぎない。差し押さえ件数の増加は他の4銀行でも起こってはいるが、Caixaの増加ペースが飛びぬけて早い。
サンパウロ州不動産ローン購入者協会(AMSPA)のマルコ・ルス会長によれば、住宅の差し押さえは通常、「半年から1年」支払いが滞った場合に起こるが、不動産金融システム(SFI)を利用して融資を受けた場合は、「3カ月」支払いが遅れただけで競売手続きが始まってしまうケースもある。住宅金融システム(SFH)の場合も、それより数カ月遅れるだけだ。
Caixaの物流・オペレーション部門副社長、マルセロ・プラタ氏は「支払いの滞りに気付いたら、当行はすぐに債務者に対して別の返済プランを提案する。我々は差し押さえるのでなく、債務者が住宅に住み続けて負債を完済することを望んでいる」と語った。
ただ、それにも関わらず、Caixaだけで4万7千件もの差し押さえ物件を抱えている。事実上、「銀行なのにブラジル最大の不動産会社の一つ」になったと現地紙は指摘する。
いったん差し押さえが起これば、各行は物件の転売を急ぐ事になる。大量の売れ残り住宅や差し押さえ住宅の負債が、貸借対照表にマイナス資産として計上されるのは、経営指標数値を悪化させかねない。
ゼツリオ・ヴァルガス大学(FGV)のラファエル・シオゼル教授は、顧客である債務者が破産するマイナス面や差し押さえ物件の維持費に加え、「この種の物件が山済みになると新規住宅への融資が減る」というリスクが銀行には増えると指摘し、銀行の不良債権化する懸念があると警告している。