【島野】「働きながら観光する」という文化に触れ合う感覚でもない。四世ビザはなんかズレているような感じですよね。
【永井】ほんとのワーキングホリデー(WH)にするなら、それはそれでよかった。でもズレちゃっている。「5年の制限」がついていて、しかも「サポーターが必要」。誰かサポーターがなってくれないといけないわけですよね。
サポーター制度は、日本での生活をサポートするのが本来の役割なんでしょうが、逆に職場に縛り付ける役割をする可能性がある。例えば会社の人がサポーターになって、「仕事辞めたら、私サポーターやめますよ」と言うようなケースですね。
そうすると介護だとか、相対的にきつくて給料が安くて、自由に転職できるブラジルの方だったらあんまり就職しないところに縛り付けるための役割になっちゃう可能性があるわけですよね。
【深沢】下地議員は、「50人の会社で社員みながサポーターになってくれれば、100人まで受入れできる」みたいなことを言っていましたよね。つまりサポーター一人当たり、2人まで四世を引き受けられると。会社ぐるみでサポーターになった場合、「会社を替える」ことは「サポーターを替える」ことですよね。
議員は「サポーターを変えても良い」と言っていましたけど、スムーズに変えられるんでしょうか? まあ、全てはやってみないと分からないことですが。
日本にいる外国人の中で、自由に仕事を変えられる人と、サポーターのおかげで縛られる人との格差が生まれていく可能性がありますね。
【永井】そうです。自由な転職ができずに職場に縛られちゃうと、ブラジル人の間でも在留資格によって格差が生まれていく可能性があります。
他のブラジルの方と結婚したり、日本の方と結婚したりすれば、在留資格を変更できるみたいではあります。そうしない限りは職場に縛り付けられちゃう。かわいそうなことになるのではないかと心配しています。
建前としてはサポーターと言うのは、そういう悪いところが出てこないように見張る立場なんだってことになっていますし、職場に縛り付けてはいけないというルールになってはいるんですが。
【深沢】それ以前にサポーターを見つけるのが現実的に難しい感じですよね。
【永井】サポーターを見つける人たちは結局、雇う人たちということになっちゃって、そうすると仕事を変えられないった問題が出てくるんじゃないかと。
▼日本にも「呼び寄せビザ」があれば良いのでは
【深沢】それで思ったんですけど、大半の日系人には日本ですでに永住・定住している親戚がいるような状態ですよね。
だから、その人たちが「呼び寄せる」って言う形もありじゃないかと。で、その人たちが呼び寄せるんだったら、結果的にサポーター的な役割をすることになる。今回の制度でも、サポーターには「永住者資格」のブラジル人でもなれる訳ですから、日本の親戚と連絡をとってバンバンとサポーターになってもらって、その親戚が働いているところに仕事も紹介してもらうというのが一番ありそうですよね。
ところで、日本に「呼び寄せビザ」という制度はあるんですか?
【永井】呼び寄せビザというか、三世の方は呼び寄せる形でもいけるんですよね。日本在住の親族が在留資格認定証明書というのを法務省、まあ、入国管理局から取らないといけないので、それが呼び寄せなんですよ。
【深沢】呼びよせの手続きを簡単にして、幅広く出来るようしたらどうでしょうか?
【永井】ただし、ブラジルの制度にあるような「呼び寄せビザ」は無いんですよね。
【深沢】あー。
【永井】なんかの要件に当てはまらないと呼べないので。
【深沢】だからその例えば、三親等どころか、四親等ぐらいまで呼び寄せられるようにしたら良いのではないかと思います。(編註=本人はゼロ親等、両親が一親等、おじいさんやおばあさん、実兄弟が二親等、いとこは四親等)
【永井】基本的には呼び寄せられる人が、日本の場合はすごく厳しく制限されていて、高度技能者のビザを持ている場合は、すごいITスペシャリストだとか、大学の先生だとか、弁護士の資格を持っている外国人で、その高度技能者って言うジャンルに当てはまる人なら、親を呼び寄せられる。そういう在留資格もあります。
ただし、普通の永住者だとかは基本的に親を呼び寄せることは出来ない。呼び寄せできるのは奥さんと未婚で未成年の子どもだけになっています。
【島野】そもそも身元保証人っていうのは―。
【永井】誰か親戚が身元保証人にはなれば三世の呼び寄せは出来るんですけど、四世以降の呼び寄せは出来ないことになっているんです。
【島野】ただし、たしかサポーターも永住ビザを持っている人じゃないとなれない。なので普通に定住ビザでいる人たちはサポーターになれない。
【永井】日本に住んでいるブラジルの方、半分以上が永住ビザなので、永住を持っている人は相当多いんじゃないかと。
(つづく)