ホーム | 日系社会ニュース | 特別座談会=四世ビザはどうあるべきか?=日伯交流の将来担う人材育成の枠組みとして=(8)

特別座談会=四世ビザはどうあるべきか?=日伯交流の将来担う人材育成の枠組みとして=(8)

帰化すれば手に入れることになる日本のパスポート

帰化すれば手に入れることになる日本のパスポート

【深沢】「呼び寄せ」がもっと簡単に出来るようになると、こっちの人は行きやすいでしょうね。日本からしても、日本側に誰か拠点となる人間が呼んでる、日本のことをある程度わかっている人間が呼んでるわけだから、安心に呼べる仕組みになるんじゃないかって気がするんですよね。
【永井】家族で一緒に住むことってすごく大切なことなので、そういう権利を保障するような制度っていうのはちゃんと整備して欲しいなと思うんですけどね。
【深沢】本当は五世でも六世でも呼べるような枠組みとして「呼び寄せ」を作ってほしいですね。
 そういう仕組みを作っておいてくれれば、親族の誰かが日本に住んでいれば、それをテコにして家族、行きたくなった人が皆行ける。あと、ときどき在日日系人に聞くんですけど、日本に帰化する条件が難しいと言うんですね。もう少し帰化する条件を緩和してもいいんじゃないかと。
 ブラジルだと、ここで生まれたらブラジル国籍もらえるわけですよね。で、日本の場合は日本国籍にしないとならない。

▼日本に帰化するメリット、デメリット

【永井】そうなんですよね。だからブラジルの場合は面白いですけど、ブラジルで生まれたらブラジル人じゃないですか。で、日本で生まれてもブラジル人なんですよね。
 まあ、いろいろ憲法が変わって一時期、外国で生まれると無国籍になっちゃう時期もありましたけれど、今は日本などの外国で生まれた子供でも、ブラジル人の子はみんなブラジル人になる。日本人の場合は、日本で外国人の子供が生まれた場合は日本人にはなれない。で、日本人の子が外国で生まれても届出しないと日本人になれない。
【深沢】日本で生まれ育って「日本しか知らないブラジル人」ていう世代が今結構出てきてるわけだし、その人たちが例えば帰化したいと思ったときに、割と簡単にできたらいいな、と。
【永井】そういう子は比較的帰化しやすいと思いますけど。
【島野】ただし、帰化したことで、なにか日本社会での扱いが変わるかというと、余り変わらない気がします。だから1月に日本に行ったんですけど、いろんなところを訪問して、保険会社で働いている私のような三世に会いました。顔はほぼ外国人なんですが「どうしても帰化したい」と言うんですよね。
 「どうして?」って聞いたら、「日本人になりたいから」っていわれたんです。「でもね、あんまりメリットが無いのよ」って、いろいろ話してたんですけど。その人も良くわかってなくて、とにかく「日本社会にもっと受け入れてもらいたい」って気持ちが強いことは特に感じました。
【深沢】帰化しても「日本人とまったく同じ」ように扱われる保証はないですよね。現実的には。
【永井】ただですね、僕は日本に住まれているブラジルの方で要件を満たしている人は、全員に帰化することを推奨しています。と言うのは、今の時点ではブラジルの人が日本に帰化した場合は、ブラジル国籍はなくならないんですよね。二重国籍になれるわけです。そうすると、何もデメリットは無いんですよね。
 ブラジルの場合は外国に住んでいても選挙に行かないと、ちゃんと届出しないとムルタ(罰)があるとか、徴兵制度があるとか、一応義務が生じますけど、日本の場合は外国に住んでいる日本人に対する義務はほとんど何も無いんですよね。
【深沢】日本国籍を持っていると、周りの日本人からの見る目が変わるだろうと思います。「この人は日本国籍持ってます」というと、ガイジン顔をしてようが、「あーこの人はニホンジンだね」って。
【永井】そうですよね。
【深沢】そういう部分ってね、妙にあるんですよね、日本人には。
【島野】そうなんですか。
【永井】あとまあ日本語が話せれば、なんか。
【深沢】日本に長いこと住んでいて、日本語が話せて、国籍が日本だったら日本人みたいな雰囲気がありますよね。その辺、ブラジルだと「アイデンティティと国籍が違うのは当たり前」なのが常識ですけど、日本ではその辺が、まだあいまい。
 たとえば戦後移民の多くは、土地取得や会社創業の関係でブラジル国籍に帰化しました。ですが、それは書類上必要だからやったんであって、アイデンティティ自体は「いつまでも日本人」というのは常識。
 昔サッカー日本代表にラモスっていう帰化選手がいましたよね。「サッカー日本代表の司令塔」とか言われてね。みんなラモスのこと「日本人」って言ってたけど、僕らは「あれは日本に帰化したブラジル人だろ」って思っていた。
 実際、僕は以前、東洋街で彼をインタビューしたとき、やっぱり「ブラジル人だ」と感じました。僕は単純に彼は「ー日本代表の司令塔」なんだから日本語でインタビューできると思って行ったら、彼がポルトガル語でこう言うんですよ。「ここはブラジルだから、ポルトゲースじゃないとインタビュー受けない」って。つまり、日本人とブラジル人を切り替えていたんですね。それで最後までポルトガル語でインタビューした。
【島&永】(笑)
【深沢】コイツー、ほんとに日本人かと。いや~、でもそのような切り替え方、割り切り方はブラジルでは当たり前なんですよね。(つづく)