ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》連邦最高裁=「全業務に派遣認める」と決定=高等労裁とは逆の判断=「労働者に不利」と労組反発

《ブラジル》連邦最高裁=「全業務に派遣認める」と決定=高等労裁とは逆の判断=「労働者に不利」と労組反発

8月30日のSTF全体審理の様子(Agencia Brasil)

8月30日のSTF全体審理の様子(Agencia Brasil)

 連邦最高裁(STF)は大法廷で8月30日、「企業がいかなる業務を第三者に委託しても、憲法には抵触しない」との判断を下したと、8月30、31日付現地各紙・ニュースサイトが報じた。ブラジルでは「業務委託」や「派遣労働」を、「terceirização」と呼んでいる。

 昨年成立した改正労働法は「企業は全ての業務を業務委託、派遣労働に頼る事が出来る」と規定しているため、2011年に労働高裁(TST)が下した「業務委託、派遣労働できるのは、企業活動の基幹業務と関わりない業務(IT企業における警備、清掃など)に限る」との判断と対立していた。

 労働高裁の判断に反対する訴訟は4千件も発生していた上、労働高裁の判断に憲法解釈上の異議をとなえる申し立ても二つ企業側から出ていたため、最高裁の最終判断が待たれていた。

 最高裁判事全員が参加した大法廷の審理では、「全業務を派遣、業務委託に頼れる」としたのはカルメン・ルシア長官ら7判事で、それに反対したのはエジソン・ファキン、ローザ・ウェベル判事ら4判事だった。

 7判事の見解では「派遣、業務委託は、企業側に認められた権利で、憲法に抵触せず、労働条件を著しく不利にするものでもない」、また「憲法は『企業活動の基幹業務』と『そうでない業務』を分けていない」というものだった。

 ただし、最高裁は「派遣会社が労働者に正当な処遇をしていない時は、派遣労働を依頼した会社も責任を問われる」と労働高裁が下していた判断と同じ立場をとった。

 最高裁はまた、今回の決定は現在係争中の裁判にのみ有効だとした。これは、過去の裁判で「企業活動の基幹業務を委託した」として罰せられ、控訴や上告手段が尽きていた場合は、決定は覆らないし、裁判のやり直しもないという意味だ。

 「派遣、業務委託できる業務に区別はない」との憲法解釈は、常に全国工業連合(CNI)も主張してきた。CNIは「ジュース会社が果物採取業務を『企業活動の基幹業務』とされ、派遣利用を禁止されたこともある」としている。

 三大労組の一つ、フォルサ・シンジカルのミゲル・トーレス会長は、「労働者は業種ごとに組合を作り、団体交渉で権利を勝ち取っている。今の労働契約の期限がきたら、経営者たちは一斉に派遣に切り替えて、労働者が酷く不利な条件に置かれかねない」との声明を発表した。