3日付エスタード紙は人工知能(AI)の進歩により、ブラジルでも絶滅危機に瀕する職種が出てきたと報じている。
ブラジル国内で、債務回収業務を代行するアコルド・セルト社(以下アコルド社)は、一カ月に3万件の債務回収や債務者と債権者の間の債務契約形態変更などを行っている。
アコルド社の創業者ジウソン・デ・サー氏は、取材に「我が社と契約する事で、ある会社は最近、700人ものテレフォンオペレーターの人員削減に成功した」と語っている。
大手銀行、携帯電話会社、保険会社などと契約する同社は、大量のテレフォンオペレーターがひっきりなしに電話をかけるコールセンターを持たない。従業員は12人しかおらず、モニターを見ながらノートパソコンを操作し、業務を行う。
少ない人員で仕事になる理由は、生身の人間とも債務整理について〃会話〃できる人工知能(AI)の利用にあると同社は説明している。グーグル、マイクロソフト、IBMなど、世界レベルのテクノロジー企業が開発した技術を組み合わせて活用しているという。
技術の進歩は将来、多くの人々から職を奪いかねない。英国オックスフォード大学の研究によると、テレフォンオペレーターは「技術の進歩でなくなってしまう職業」のトップに位置づけられている。テレフォンオペレーターの次には、小売販売員、会計・経理部門、監査員やその他の管理業務関連職務が続く。
ブラジル電話サービス業労働者組合(ABT)によると、昨年は8万人分のテレフォンオペレーターの職が失われた。
コンサル会社マッキンゼーは、ブラジルでは2030年までに、全体の14%、1570万人分の雇用が失われるだろうと予測している。
ブラジルは来るべきデジタル化への準備が足りず、デジタル化で新たに生まれる職を担える人材も育っていないと、同社は警告する。同ブラジル法人共同経営者フェルナンダ・マヨル氏は、「人々は、安易に機械に自動化されない職を探さねばならない」と語る。
また、他の国では機械化が進んでいるのに、ブラジルでは文化的理由や治安上の理由で機械化されていない職がある。そのひとつは「門番」だ。
ブラジルは治安上の問題から、ほとんどのアパートに門番がいて、アパートの柵越しに住民や訪問者、配達人とコミュニケーションをとって、門を開け閉めしている。
アパートには防犯カメラがついていて、その映像をチェックする人員も必要だ。カメラやモニターの進歩で、こうした人員には一度に複数のアパートの監視をする事が求められている。
さらに、人工知能を搭載し、門番が遠隔操作できる郵便受けや、引越し業者に専用のキー解除コードを出して、引越しが済めば自動的にそれが無効となる技術も開発されている。門番の就業形態も今後、技術の進歩の影響から逃れられない。