リオ市北部、サンクリストヴァン地区にある、ブラジル最古の自然科学機関、国立博物館で2日夜、大規模火災が発生し、2千万点以上の所蔵品の大部分が炎に包まれたと、2、3日付現地紙・ニュースサイトが報じた。3日付エスタード紙のように、火災写真を1面に大きくすえて「予告された悲劇」との学術関係者のコメントを見出しにしたメディアも複数あった。
博物館にはミイラや、ブラジルで発見された隕石、恐竜の化石なども所蔵されていた。ルイス・ドゥアルテ副館長は「所蔵品はほとんど残らないだろう。200年守ってきた文化遺産が一晩で灰になった。今の政府もこれまでの政府も博物館を守るために何もしてくれなかった」と語っている。
同博物館の主要所蔵品の一つには、米州大陸で発掘されたものとしては最古、1万2千年前の人類、〃ルジア〃の頭骸骨があった。その研究をしていた人類学者のワルテル・ネーヴェス氏は、「いつかこうなる事は予見されていた」と語る。
同博物館は今年、社会経済開発銀行(BNDES)と2170万レアル(約5億8千万円相当)のスポンサー契約を結んだばかり。これは施設の修繕に使われる予定だった。
リオ連邦大学(UFRJ)が管理していた同博物館は老朽化が進み、再三改修の必要性が叫ばれてきたが、近年は維持費も削減されていた。
火の手が上がったとき、博物館の一般公開は終了していて、館内にいた4人の警備員にも怪我はなかった。
消防は2日の午後7時半頃に出動したが、現場近くの消火栓には水がなく、給水車も出動した。3日の午前3時ごろにようやく火の勢いは食い止められたが、完全消火にはいたらなかった。出火原因はまだ明らかになっていない。
同博物館では、火災の前から多くの展示室が傷んでおり、所蔵品の多くは展示されておらず、保管されていただけだったが、展示品、保管品のほとんどは焼失したと見られている。
セルジオ・サー・レイトン文化相は、「明らかに防げた悲劇」とした上で3日にも、博物館復旧計画を立ち上げると共に、国内全ての博物館の防火体制を調査するとしている。
火災から一夜明けた3日の午前9時過ぎには、博物館を敷地に含むキンタ・ダ・ボア・ヴィスタ公園の前には、「火災は連邦政府、州政府、リオ市など公権力全体の失態」と批判する一団が集い始めたが、リオ市警備隊によって、公園に入る事を禁じられた。公園に力づくで入ろうとする人に催涙スプレーがかけられる光景も見られた。
かつては皇帝の住まいとしても使われた同博物館は、1818年に当時のポルトガル王ジョアン6世(1825年11月15日にブラジル皇帝に即位、26年3月10日に逝去)が自分の収集品を展示するために設立した。今年6月に開館200周年を迎えていた。