前回コラム子が担当した本欄では、俗に「先の読めない大統領選」とよく言われている今年の大統領選が、果たして本当にそうなるのかどうかを「近年の全国市長選では政見放送の持ち時間でガラリと展開が変わった」という話を例に書いた。今回はもう一つ、別の角度から見てみることにしよう。今回は、大統領選と並行して行なわれる知事選・上院議員選を見てみたい▼「これまでのような汚職政権はもう嫌だ」。これはラヴァ・ジャット作戦以降、世間一般からよく耳にするようになった言葉で、労働者党(PT)、民主社会党(PSDB)、民主運動(MDB)の俗にいう「三大政党」にアンチを唱える風潮もネットなどでは目立つ▼だが、いざ知事選や上議選の世論調査に目を通してみると、「おい、その意気込みはどこに行ったんだ?」と言いたくなるような結果になっている▼27州の8月の世論調査の結果を見てみると、一番目立つ名前はPT、PSDB、MDBで何も変わりはない。PTに至っては、前回の州知事選での議席数「5」を超えそうな勢いもある。罷免された前大統領のジウマ氏もミナス・ジェライス州上議に復帰有力だ。MDBも、ラヴァ・ジャットの際に疑惑をよく耳にしたレナン・カリェイロス氏もエジソン・ロボン氏も、ジャーデル・バルバーリョ氏も余裕で上議に当選しそうな勢い。PSDBも、中道右派の座をめぐって、やや協力政党の民主党(DEM)に食われている印象もなくはないが、凋落をあえて指摘するようなものではない▼それ以外に強いのは進歩党(PP)や社会民主党(PSD)、共和党(PR)などのいわゆるセントロン系政党が続く。このところ、「党分裂」の危機で弱体化していた左翼系二番手のブラジル社会党(PSB)も復調の兆しを見せ、シロ・ゴメス氏の民主労働党(PDT)もそこそこ健闘、といったところだ▼つまり、「これまでと驚くほど、何も変わってはいない」のだ。大統領選に出馬しているマリーナ・シウヴァ氏のREDEやアルヴァロ・ジアス氏のポデモスが知事や上議で1人か2人当選者が出そうなくらいで、あとは右派ならジャイール・ボルソナロ氏の社会自由党(PSL)やジョアン・アモエド氏のノーヴォ、急進左派なら社会主義自由党(PSOL)といったところは苦戦している▼PSLは極右ボルソナロ氏で名を上げた勢いで今回は多く候補を出しているが、現状可能性があるのがリオ上院選での同氏の息子フラヴィオ氏くらい。サンパウロ州も同党の中心的存在のマジョール・オリンピオ氏がもしかしたら逆転で滑り込めるか・・・といったところ。フラヴィオ氏もオリンピオ氏も支持率は13%ほどだ▼つまり、大統領選でボルソナロ氏を支持しても、その勢いを政党や地方政治にまで波及させたいと思っている人は、サンパウロ州やリオのような都会でやっと10数パーセントいる程度、ということだ▼「国政と地方は別」という考え方もあるが、票を投じるのは全く同じ人物。そう考えると、果たして今回の大統領選も、根っこの部分でそれほど大きな意識改革はあるのか。コラム子としては甚だ疑問だ。(陽)