6日の刺傷事件後は入院中の極右大統領候補、ジャイール・ボルソナロ氏(社会自由党・PSL)は、12日夜も緊急手術を受けるなど、回復状況が思わしくない。それにより、同氏のキャンペーンに大きな支障が出てきていると、14日付現地紙が報じている。
サンパウロ市アルベルト・アインシュタイン病院に入院中のボルソナロ氏は12日夜、腸閉塞に伴う緊急手術を行なった。この手術は、事件当日に行われた緊急手術に次ぐ2回目のもので、癒着した部分を戻す作業と、1回目の手術の縫合部の破れをつくろい、腹腔内を洗浄する作業が行われた。
手術を担当した医師によると、同氏はまだ、人工肛門を外すための手術が必要だという。再々手術とその後の回復も含めた完全回復にはあと4カ月から6カ月かかるという。退院も、少なくともあと10日はかかる見込みだ。
現状では、ボルソナロ氏は会話をするのも困難な状態だという。病院関係者の話だと、「仮に退院しても、自由に歩けるまで回復するのはかなり遅くならざるを得ない」「群集の前に現れ、かつがれたり、選挙カーの上に乗ったりするなどの行為にはドクター・ストップがかかる」という。
そうしたこともあり、少なくとも一次投票(10月7日)前は、ボルソナロ氏自身の街頭キャンペーン参加は絶望的だ。PSLの重鎮で、サンパウロ州の上院議員候補のマジョール・オリンピオ氏も「現時点では医師たちも、いつから選挙活動ができるのかの判断ができずにいる」と語っている。
ボルソナロ陣営は既に、予定されていたキャンペーンのうち、北東部のものは全てキャンセルした。北東部は労働者党などの票田で、同氏にとっては支持率が低い地域の一つだ。
現状では、ボルソナロ氏の息子のフラヴィオ氏がリオ、エドゥアルド氏がサンパウロ州のキャンペーンを引き受けることが決まっている程度だという。
一方、陸軍予備大将でボルソナロ氏の副候補のアミウトン・モウロン氏(ブラジル労働革新党・PRTB)は、「ボルソナロ氏の代理として討論会などに参加する」と息巻き、高等選挙裁判所にその希望を申し出たが、これが陣営内部で物議を醸している。この申し出はPRTBの単独判断によるもので、ボルソナロ家やPSLの了承を取っていなかったからだ。
また、モウロン氏は13日、パラナ州クリチーバでの講演会で、「新しい憲法を作りたい。それを作るのは必ずしも国民の投票で選ばれた人である必要はない」と、立法機関である連邦議会への侮辱ととられかねない発言を行った。同氏は以前も軍の許可なく政治的発言を行って物議を醸しており、「舌禍」も不安視されている。
オリンピオ氏は、「私やエドゥアルド、モウロンでは100万人は集まらない。でも、なんとかメッセージは送れるはずだ」と語るに止まった。