就任後、既に1カ月有余が経過した今日、アブド・ベニテス新政権は、始動したエンジンが未だ全開できないでいる様である。
その一因は、政権与党のコロラド内部で、カルテス派を抑えて今回政権の座に就いたマリトと、カルテスの間の幾多の摩擦の傷が癒されず、大同一致の行政体制が未だに築けずにいる事である。
ちなみに、カルテス前政権の過半末期は悪政、失政が相次ぎ、マリトの就任直前には、パ国政府の庇護を受けていたと見られる、ブラジルの大犯罪組織網「首都第一コマンド=PCC」の重要な首領の一人、エドゥアルド・アパレシド・デ・アルメイダ(別名ピスカ)が、アスンション市で潜伏中に逮捕された(本紙8月3日付記事参照)。
そして、その少し前には、カルテスが「魂の兄弟=血誓の友」と呼んで憚らず、ブラジル当局が「ドレイロ中の大ドレイロ=為替洗浄犯」と睨むユダヤ系ブラジル人ダリオ・メッセル(逃亡中で、どこに潜伏しているのか依然として不明)との、悪友関係が暴露された(同5月25日付記事参照)。
なお、これ等以外にもブラジルの悩みであって、アメリカでも問題視されている、カルテスが生産するタバコの密輸出等、色んな発覚したスキャンダルは数える暇もないが、マリト政権の就任直前、又その後の現在に至って、それ等諸般の悪事がポロポロと芋蔓式に綻び出したのは、新旧政権交代の時勢(新風)によったもので、単なる偶然ではなかろう。
今になって思えば、何ゆえにカルテスは違憲にも拘わらず、執拗に大統領連続再選を狙い、そうでなければ憲法が定める名誉職の「終身参議員」に引退する代りに、発言権及び投票権も有る正参議員に、ゴリ押しでも成りたかったのかが良く解ると言うものだ(本紙4月25日付記事参照)。
要するに、カルテスは大統領の権威、又は国会議員の免責特権のどちらかを持続、あるいは確保して、自分の前政権下で犯した多くの失敗や違法行為と幾多の失政、未完成事業の責任を問われることを回避したい遠謀があっての事だったと思える。
しかし、現にそれら野望のいずれもが不発に終り、カルテスはその後、怨み辛みをマリトの所為に当てこすり、新政権の行く手に事ある毎に、障害物やバナナの皮を敷いて、つまずかせたりスリップさせようとする。全く男気ない話だ。
かたやマリトも、カルテス派の有力者筋が、自分の政権は2年とは保たないだろうと言い触らしているのを知っていて、カルテスに対し強く抗議しているが、お互いに水掛け論の域を超えない時間潰しだ。
でも、ここでちょっと気になるのは誰の言い分にしろ、「マリト政権は2年も続かないだろう」と言う、まことしやかな説である。
なぜかと云えば、その底流には隠然たるマフィア勢力の根深い陰謀が、暗に機能しているのではないかと、考えられるからである。
端的に言って、カルテスは誰しもが知る様に、清濁併せ呑む人物で、自家製のタバコを表看板に、金になる事なら〃何でも御座れ〃で、複数の闇商売で財を成したパラグァイ有数の大財閥である。
大統領在職中は、専用の航空機がない政府には頼らず、近隣諸国への外遊には、専ら自家用小型ジェット機を公用に使っていた程の資産家なのだ。
そしてこの度は、「臭い物に蓋をする」主義の風潮の中、マリト政権の登場で早々に「痛い足のタコ」を踏まれたマフィアの連中は黙っている筈はない。
ここで、単にマフィアとは言っても、その背後には全世界にわたり隠然と君臨する、ある大勢力の存在を知って置く必要がある。
ちなみに、冒頭で触れた「PCCコマンド」のブラジル人大物「ピスカ(PiskaP)の逮捕に始まり、最近は当局の「Berilo(ベリーロ)作戦」の展開により、アルトパラナ県の日系イグアス移住地に近い、アカライ水力発電所のダム(湖)沿岸の大きな敷地に所在する大別荘マンションの立入検査で、コロンビアの麻薬大義賊、故パブロ・エスコバルに心酔する、パラグァイ人のレイナルド・ハビエル・カバニャス(33・別名クチョ)を逮捕した。くわえて大量の麻薬、20台近くもの高級車やスポーツカー、ヨット等々の高価な資産の他に、現金80万ドルを押収した。
当局の説では、麻薬闇取引きによるクチョの週間収益は約25万ドルにも上ると言われる。
今回発見された、このクチョのリゾート大マンションは、彼が大崇拝する故パブロ・エスコバル義賊が、コロンビアで所有していた豪邸「ナポリHacienda荘園 Napoles」を模写した忠実なレプリカで、エスコバルの大画像も飾った、頗る贅を尽した広大なマンションである。
なお話は前後したが、これ以前にも8月初旬に、カニンデジュ県サルト・デル・グアイラ市で、国境麻薬密輸団一味が大打撃を受けている(本紙8月14日付記事参照)。
一説には、これ等の情報は既に2016年来、前政政権当局は感知していたが、何故か対策の処置はなんら為されなかったのだと、Senad=国家麻薬取締局のアルナルド・ジウチョ新長官は語った。
ここで内省的に想起させられるのは、詳しくは別稿を要するが、一言でいえば我等の日常生活は全て、ユダヤの国際資本やその政治勢力の影響下に完全に浸たり、ドップリ漬かっている事実を知らないで暮らしている事である。
全世界に広がり、大なる政経影響力を誇るユダヤ資本の総元締めに君臨するのが、ロスチャイルド閨閥である。
その家祖は、①フランクフルト家(1901年閉鎖)、②ウィーン家(1938年閉鎖)、③ロンドン家、④ナポリ家(1901年閉鎖)、⑤パリ家、それに⑥アメリカのロスチャイルド家である。
いわゆるユダヤ資本は世界の石油、金銀宝石やウランの取引を排他的にコントロールするのみならず、マスメディアや娯楽産業の他に穀物、農産物、化学製品、医薬品、銀行、保険や軍需産業等を全て牛耳っていて、其の経済権力は夫々の取引所で優に国際市場価格を左右する力を有し、世界の経済を思う様に動かしている。
なお、政治的には国連はユダヤ資本の政策代理店の様なもので、世界各国の政策方針に偉大な勢力を振るう。
しかし、ユダヤ資本の最も収益的な事業は燃料や軍需産業ではなく、正に各国の政府を巻き込んだ、麻薬の国際闇取引きに存するのだ。ユダヤ資本の金融機関は、スイスに於いて、それに誂え向きの資金洗浄サービス業を行なっている。
我がパラグァイなど、多くの腐敗政治家連が溢れている国は、その魔手の前にはイチコロなのは、成程と合点が行くと言うものだ。
あるカルテス派の要人が、「マリト政権は2年とは保たないだろう」と予言したが、必ずしも意味がない訳ではないと、これで考えさせられる。
麻薬マフィアの力は想像外に強く、痛い足を踏まれると、その復讐は怖しいので、マリトも余程巧妙に麻薬取締の処置を考えなければならない。
いつか、参議員のブランカ・オベラール女史が、「パラグァイは統治の難しい国だ」と発言したのが、今更いみじくも思い出される。