国内外で高まる批判に対処すべく、現在は支持率1位の大統領候補ジャイール・ボルソナロ氏(社会自由党・PSL)が、近く、民主的なイメージを打ち出した声明を出す予定だと、24日付現地紙が報じている。
ボルソナロ氏は現時点での世論調査では支持率1位ではあるが、このところ、アンチ運動が激化している。
その最大のものは、女性を中心にネットで広がっている「エレ・ノン(彼ではダメ)」運動で、同氏が女性や同性愛者などに行ってきた差別的言動を強く批判。20日頃からは、国内の著名人や世界的な人気歌手やジャーナリストまでが加わり、この輪が世界的に拡大しつつある。
そこに加え、22日には六つの労組団体がボルソナロ氏への投票を拒否する声明を発表した。さらに23日には、財界、教育界、芸能界などの文化人約150人が、「ブラジルの政治が軍政時代に逆戻りしないこと」を強く求めた「デモクラシア・シン」という名の宣言に署名。軍政礼賛者のボルソナロ氏を強く牽制した。
その一方、財相予定の経済学者で、財界でボルソナロ氏の評判を上げていたはずのパウロ・ゲデス氏が、国民に不人気で2007年に廃案になった金融取引暫定納付金(通称、小切手税、CPMF)導入の噂で批判されたのに加え、21日には米国大手経済誌「ジ・エコノミスト」が、「南米の脅威」との見出しをつけてボルソナロ氏を表紙にした。
ボルソナロ氏は21日に入院先のサンパウロ市アルベルト・アインシュタイン病院で、ゲデス氏を擁護する発言を行い、CPMFの導入を否定。ゲデス氏の提案は「CPMFに似てはいても根本的に違うもの」として批判されている内容を否定したが、それが具体的にどのようなものなのかの説明はなかった。
これらの動きを受けてボルソナロ氏は、近く、声明か動画を通じて「国民向けのマニフェスト」を出す予定でいるという。ここで同氏は批判に返答し、民主主義を守る意向を示すものと見られている。
これに関して、同氏の陣営は「すぐにでも」と同氏を急かしているとも言われているが、ボルソナロ氏自身は内部での話合いが必要だとしているという。
このマニフェストのアイデアは、2002年の大統領選で、支持率1位だったルーラ氏(労働者党・PT)が、自身の大統領当選を強く恐れていた市場などに対して行った宣言「ブラジルへの手紙」を意識したものだ。
ただ、この発表のタイミングがいつになるかはまだわかっていないという。ボルソナロ氏は6日に刺傷。12日には緊急手術も受けたが、その後の回復は良好で、退院は28日となる可能性が濃厚だという。