極右大統領候補のジャイール・ボルソナロ氏(社会自由党・PSL)の前妻が、「(同氏から)殺されるのを恐れてノルウェーに逃げている。かくまってほしい」と要請した記録が外務省にあり、当時の在ノルウェーブラジル大使館担当者がその電報を打ったことを認めていたことが25日に判明した。29日には全国で、同氏に対する女性たち主導の抗議デモが行われる予定となっている。26日付現地紙が報じている。
この件は2011年6月、当時、ノルウェーにあるブラジル大使だったカルロス・エンリケ・カルジン氏に、ボルソナロ氏が電話で連絡を取ったことに端を発している。ボルソナロ氏はその電話で、「妻が自分の許可なしに幼い息子を連れてノルウェーに行っている。状況が知りたい」と語ったという。また、翌日は、外務省からも同件に対応するよう要請する電報が届いたという。その当時、ノルウェーではテロによる連続殺人が起こっていた。
これを受け、同国大使館が妻だったアナ・クリスチーナ氏の所在を確認し、連絡したところ、同氏は「2009年に、ボルソナロ氏を恐れてノルウェーに逃げた」とし、さらに「かくまってほしい」と頼んだという。
カルジン氏によると、アナ氏と話したのは副領事だったマテウス・エンリケ・ゾキ氏で、副領事は息子の無事を確認後、「国際法に従えば、ボルソナロ氏には息子をブラジルに送り返すよう要請する権利がある」と告げた。
これを聞き、アナ氏は「ボルソナロ氏から脅されて逃げてきた」と告げたという。大使館側はアナ氏の報告をそのまま記録し、ブラジル外務省に電報で報告を行った。フォーリャ紙では、その電報の写真も掲載している。
電報の存在は最初、25日付フォーリャ紙電子版で報じられた。この報道後、アナ氏が25日、「ボルソナロ氏から脅されたことなどなく、今では息子のよい父親だ」と報道を否定する動画を出した。
アナ氏は「ボルソナロ」姓を使い、政党「ポデモス」から下院議員選に出馬している。ボルソナロ氏とアナ氏の間では既に、養育権などについて示談が成立している。
ただ、外務省への報告記録は残っており、他の大統領候補がボルソナロ氏への攻撃材料にすることは避けられそうにない。ボルソナロ氏自身も25日にこの件を問われたが、無言を通した。
現在、ネット上では、女性たちを中心に「エレ・ノン」と呼ばれる反ボルソナロ運動が盛り上がり、29日には全国24州、さらにニューヨークやロンドン、ブエノスアイレスなど、世界規模で抗議行動が行われることになっている。
この運動に関してはジェラウド・アウキミン氏が既に自身の政見放送で触れているほか、フェルナンド・ハダジ氏、シロ・ゴメス氏、マリーナ・シウヴァ氏、ギリエルメ・ボウロス氏といった大統領候補たちも、29日の抗議運動への参加を検討しているという。