社会福祉法人「こどものその」(頃末アンドレ理事長)が1958年9月1日の同園の発足から60周年を迎え、先亡者追悼法要と創立60周年祝賀会を同施設で行った。日本から出席した学校法人大乗淑徳学園理事長、浄土宗大巌寺住職の長谷川匡俊師、淑徳大学総合福祉学部の米村美奈教授、社会福祉法人マハヤナ学園理事長の菊地悦子さんのほか、園生約70人を含めた約400人が節目の日を祝った。
設立者は、南米浄土宗日伯寺を開教した長谷川良信(りょうしん)師。その長男の長谷川良昭さん、青年開教師の佐々木陽明さん、西本尊方(そんぽう)さんとともにこどものそのの前身を発足し、知的障がいを持って生まれた子供を受け入れをはじめた。
同園体育館内で行われた追悼法要は長谷川匡俊(まさとし)師(良昭さんの実弟)が執り行い、来場者や園生、先生などが焼香に並んだ。その後祝賀会が庭で行なわれ、野口泰在聖総領事、西本エリオサンパウロ州議らも出席した。
祝賀会では日ブラジル歌斉唱後、中平マリコさんと園生らで園歌を歌った。開会挨拶に立った頃末理事長は、「長谷川氏が作った『彼らのためではなく、彼らと共に』という理念をもって、こどものそのの使命を60年間果たしている。今まで支えてくれた人々に感謝している」と語った。
続いて長谷川師が挨拶に立ち、「兄・良昭から、第2のふるさとと聞いていた。今日の節目に園生がとても嬉しそうにしているのが印象的。皆さんの力で益々発展することをお祈りします」との祝辞を送った。
来賓挨拶後、鏡開きとなり、西尾ロベルト氏が乾杯の音頭を取った。園生、頃末理事長、長谷川師によるケーキカットも行なわれたほか、中平マリコさんが歌を披露し会場を盛り上げた。
6歳から35歳まで同園で生活し、現在はバーテンダーの仕事をしている吉田シンコウさん(47、二世)は、「ずっと過ごした園がこんな大切な節目を迎えられて嬉しい」と笑顔を見せ、「できるだけ長く活動を続けてほしい」と期待した。
また、参列したほとんどの園生が高齢者となり、その後方には歴代理事長や職員ら故人の写真が飾られていた。還暦を迎えた「こどものその」だけに、大きな時間の流れを感じさせるセレモニーとなった。
□関連コラム□大耳小耳
こどものその創立60周年記念行事で先亡者追悼法要を執り行った長谷川匡俊師は、法話の中でこんな話も。「花を見て綺麗という人はいるが、その花を咲かせる根に注目する人はあまりいない。こどものそのの60周年はその根の部分を作ってきた役員や職員、園生に思いを馳せる機会」とのこと。淑徳大学総合福祉学部の米村美奈教授も、「この施設ができた当時、日系社会で初めての障がい者支援だったことに深い意味があるのでは」との成り立ちの重要性を振り返った。