10月7日に一次投票が迫った大統領選は、極右候補ジャイール・ボルソナロ氏(社会自由党・PSL)と政権奪還を目指す労働者党(PT)のフェルナンド・ハダジ氏の、左右両極対決で決選投票になるだろう、という見方が強くなってきている。たしかに、ここ最近報道される世論調査の結果から判断すれば、そういう推論になる▼この状況で、まだ世論調査での支持率が10%に届かない民主社会党(PSDB)のジェラウド・アウキミン氏は「まだまだ最後までわからない」と言い続けている。それに対して党内からも失笑が漏れ、地方選のスタッフにはボルソナロ氏を推薦しはじめている人も出はじめているという▼だが、ただ単に「過去のデータ」に基づくと、アウキミン氏の主張もなまじ間違ってはいない。なぜなら、過去6年の選挙で、PSDBは投票日間際での怒涛の追い上げを3度記録しているからだ▼まず、ひとつが2012年のサンパウロ市市長選でのジョゼ・セーラ氏だ。同氏は同年9月25日発表のイボッピの調査で17%の支持率で3位。1位は34%のセウソ・ルッソマノ氏だったが、10月2日にルッソマノ氏の支持率が27%に落ちた。それでも19%の支持だったセーラ氏だったが、投票前日の10月6日にルッソマノ氏に22%対22%の同点で並び、7日の投票日には30%の支持率で1位通過だった▼続いて14年大統領選のアエシオ・ネーヴェス氏だ。14年9月23日発表のイボッピの調査で19%の支持で3位。2位のマリーナ・シウヴァ氏は29%だった。その後も10月2日発表の同調査でも19%と変わらなかったが、マリーナ氏の支持率が24%に落ちた。すると、投票前日の4日にアエシオ氏は24%に伸び、21%に落ちたマリーナ氏を抜くと、5日の投票日には33%まで票を伸ばし、多くの国民を驚かせた▼続いては2016年サンパウロ市市長選のジョアン・ドリア氏だ。同氏は9月22日付のダッタフォーリャの調査で25%の支持ではじめて1位となったが、2位のルッソマノ氏もまだ22%だった。だがドリア氏は27日付で30%、投票日前日の10月1日に一気に44%まで票を伸ばすと、2日の投票日には、1週間前には誰も予想しなかった53%の支持で決選投票を待たずして当選が決まった▼この12、16年の全国市長選、14年の大統領選の3つの選挙で、ここまで劇的な票の伸びを示した例は他にない。アウキミン氏の発言にまだ余裕があるのは、彼自身がこうした事例を覚えているからなのかもしれない▼コラム子が推測するに、PSDBの候補が大型の選挙でこうした動きをするのは、「最後の最後での妥協票」という要素が、有権者の中になんとなくあるからではないだろうか。PSDBが普段主張している政治理念というのは正統派すぎて目新しさがない。同党の有名政治家の一般的なイメージも、どちらかと言えば昔ながらの「おじさんくさい」イメージで、若い人へのアピールにはかける。だから最初はどうしても注目されにくい。だけど、いざ冷静に考えてみると、「言っていることは一番真っ当だし、ここはやはり」という気持ちが有権者に働いて、こうした間際の大逆転になっているのではないだろうか▼もし、この理論が今回も通用するなら、いきおい過激な理想主義で支持の高いボルソナロ氏から、現実的なものの考えのアウキミン氏が最終的に票を奪う、という筋書きもありえる。実際、一部の伯字紙は既にそういう指摘もしている。先にあげた例で大逆転を喫したルッソマノ氏やマリーナ氏も理想化肌の政治家だった▼ただ、今回大逆転を演じるには、アウキミン氏の現状の支持率はちょっと低すぎるか。ボルソナロ氏との差は現状20ポイント近いが、果たして?(陽)