国際協力機構(JICA)の前田秀理事は、講演「JICAの開発途上国における法整備支援」を9月23日正午から、サンパウロ州立総合大学法学部で行ない、同学や日系社会関係者ら約50人が聴講した。
法制度は国家発展の礎であり、国連ミレニアム開発目標においてもグッド・ガバナンス(良い統治)の必要性が謳われるなど、途上国の開発課題解決のための重要な基盤として認識されている。
明治維新により欧州法を導入して近代法を確立し、社会や文化、既存制度に適合するように発展させてきた経験と知識を活かし、法整備支援を通じた途上国の発展を後押しするのが、同機構の事業の一つとなっている。
講演では、法整備支援の枠組みについて説明した上、これまでの支援の実例につき紹介された。
ポル・ポト政権下で国民の約3割が大量虐殺された紛争終結後のカンポジア支援では、「知識人は虐殺され、法曹関係者は指折り数えるほどだった。法律文献もなく、クメール語での法律用語作成から始めなければならなかった」と話す。
96年に支援が着手され、99年から民法・民事訴訟法起草支援を開始。その結果、06年に民事訴訟法、07年に民法が制定された。同国への法整備支援は現在も続けられており、法運用の基盤作りを目指したプロジェクトが22年まで行われる見通し。
その他、民事法以外でも、競争法、知的財産法、税制、関税等の分野で、東南アジアを中心に支援が行われている。
前田理事は「その国の自立性を尊重し寄り添いながら、対話を通じてその国に相応しい法制度を整えてゆく。育成された人材を核として、次世代を育ててゆく体制を今後も支援してゆきたい」と語った。
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