ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》ボルソナロ=所得減税で270億レ減収か=公言された経済政策実施なら=米国の企業減税のマネ?=中国嫌悪に懸念の声も

《ブラジル》ボルソナロ=所得減税で270億レ減収か=公言された経済政策実施なら=米国の企業減税のマネ?=中国嫌悪に懸念の声も

22日、企業家代表を迎えたボルソナロ氏(@jairbolsonaro)

22日、企業家代表を迎えたボルソナロ氏(@jairbolsonaro)

 大統領選で優勢となっている社会自由党(PSL)のジャイール・ボルソナロ氏の経済政策のうち、現状で明らかになっているものに従うと、年平均で270億レアルの減収になるという。24日付フォーリャ紙が報じている。

 ボルソナロ氏が当選の暁に導入する意向を明確にしている経済政策のひとつは、経済スタッフであるパウロ・ゲデス氏の意見を基にした所得税減税だ。現状の案では、月収が最低給料の5倍(現在の額なら4770レアル)未満は免税(現行制度では、社会保障費徴収後の月収で1903・98レアル未満のみが対象)、それ以上の所得の場合は所得額にかかわらず、一律20%を徴収するという。
 また、企業に対する課税率は、現行の24~34%が一律20%に引き下げられる。これに従うと、企業から徴収する所得税は約340億レアルの減収となるという。
 また、個人納税者で見ると、最低給与5倍未満の所得者の免税と、課税率を一律20%とすることで税負担が軽くなる人の減税額を合計して、約690億レアルの減額となる。
 その一方で、企業の株主に支払われる配当金からも20%徴収することにより、合計760億レアルの増収が見込まれるという。
 ボルソナロ氏は増税を行うことを嫌っている。だが、財政責任法によれば、減税を行う場合、減収分を補うような増収案を出さなければならないことになっている。
 この方針に関して、経済学者のセルジオ・ゴベッチ氏は、「企業の税負担を減らすことはイギリスやフランス、チリ、ノルウェーなどでも行われている国際的なこと」だとの見解を示している。米国でも、トランプ大統領が企業への課税率を35%から21%に引き下げている。
 こうした減税を行うと、企業の国際競争力が向上するという利点がある。だが、ゴベッチ氏も「20%の一律課税」という点には疑問を呈している。さらに、応用経済調査院(IPEA)調査員のフェルナンド・ガイジェル・シルヴェイラ氏も、「これはハンガリーやエストニアといった旧共産主義の国で行われていた徴税方法だ」とし、ブラジルのような貧富の激しい国では不平等なやり方で、特にCクラスの人の負担が重くなるという見解を示している。
 また、ボルソナロ氏の場合、もう一つ経済面で懸念されているのが中国への嫌悪だ。これはエレトロブラスの民営化に関し「これ以上、ブラジルを中国の手に渡すのか」と発言したことに端を発している。
 だが、現状でも約240億の投資を行っている中国を無視できないとの声は産業界で強く、ブラジル/中国商工会議所のシャルレス・タン会長も、「中国とブラジルの関係が築かれたのは軍政時代の1974年だ」として、ボルソナロ氏に偏見を持たないよう望んでいる。