一行はバスに乗り込み、イーリャ・ソウテイラ水力発電所へと向かった。同発電所はサンパウロ州とマット・グロッソ・ド・スル州の境界となっているパラナ川に跨っており、ダム全長は5605メートルあり、貯水槽面積は1195平方キロメートルにも及ぶ。
同発電所は20の発電機を有し、設備容量は344万キロワット。年間で約420万世帯分の電力を供給しており、サンパウロ州では最大、国内でも第三の規模の水力発電所として知られる。
パラナ川に掛かる水門橋を渡り、車窓から発電所を下に眺めていると、川下800メートルのところに大河に浮かぶ全長2千メートル、幅300メートルの孤島がある。これが、市の由来となっている「イーリャ・ソウテイラ」だ。
同市観光局員によれば、この島から川下12キロ地点に、5つの小島からなる列島がある。それに対し、一島だけ離れて孤立していることから、その名が付けられた。同島は、固有の生態系を有しており、04年には環境保護区域にも指定されている。
バスがマット・グロッソ・ド・スル州側に向かう途上、観光局員が「州を跨ぐとタイムゾーンが変ります。お手持ちの携帯で確認してみて下さい」との案内が。携帯電話を片手に見ていた参加者は「(時間が)変らなかったね」などと談笑していた。
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同発電所の歴史を紐解くと、ヴァルガス政権下における国土開発の流れを汲み、地域の経済社会開発を目的として7州が参加するパラナ・ウルグアイ川流域州間委員会が発足。55年に「パラナ川水力発電利用」と題した事業が立案された。
これはかつてパラナ川にあった落差60メートルの「ウルブプンガの滝」を水力発電に利用しようとしたものだった。その滝を隔てて建設されたのがソウザ・ジアス(ジュピア)発電所とイーリャ・ソウテイラ発電所だ。その後、パラナ川支流のチエテ川に位置するトレス・イルマオス発電所の建設が進められ、これらを総称し「ウルブプンガ水力発電複合施設」と呼ばれる。
60年代に入るとジュピア発電所を皮切りに、これらの複合施設の建設が次々と進められた。イーリャ・ソウテイラ発電所工事はジュピア発電所が完成する前に開始されたため、同発電所建設チームは引き続きイーリャ・ソウテイラでも任にあたった。そのなかにはサンパウロ大学名誉教授で水理工学を専門とする上原幸啓工学博士も事前調査に加わっていたという。(続く、大澤航平記者)