10月31日、最高裁大法廷は、司法が大学の運営に介入し、警察を導入させたりすることなどを禁じた、10月27日付のカルメン・ルシア判事による暫定令を9対0の満場一致で承認した。同暫定令は、大統領選決戦投票前の10月23日から起きていた、大学内での反ファシズム・キャンペーンなどを「特定候補の支持や妨害にあたる」選挙宣伝とみなし、選挙裁判所が警察に命じて証拠を押収させるといった行為を禁ずるものだ。1日付現地紙が報じている。
学生や教員が学内で行う思想や意思の自由表現や抗議行動を選挙宣伝とみなし、これを抑圧する行為は、大統領選の決戦投票直前の23日以降に表面化し、全国各地の公立大学に広がった。具体的には、地域選挙裁判所の命令を受けた警官が授業中の教授を脅したり、反ファシズムを訴えた掲示物を取り除かせたりするなどの事件が、リオ州フルミネンセ連邦大学など、少なくとも9州、17の連邦大学や州立大学に及んだ。
「反ファシスト」などのメッセージはジャイール・ボルソナロ次期大統領の極右路線を否定するもので、対抗馬だったフェルナンド・ハダジ氏(労働者党・PT)に有利な選挙宣伝と、選挙裁判所が判断したためだ。
だが、この司法判断は最高裁によって否定された。今回の審理でも報告官をつとめたルシア判事は、「学内に入ることが認められる唯一の圧力は自由で多様な考え方」、「抗議活動の禁止や妨害は、自由で多様な思想を表現する自由を奪う検閲や言論統制に他ならず、学生や教員にくつわをはめる行為だ」として、選挙裁判所の判断に異議を唱えた。ルイス・ロベルト・バローゾ判事も「警官が講義を中止させ、横断幕やコンピューターなどを押収する行為に正当性はない」とした。
ジウマール・メンデス判事はさらに、「授業内容を査察するような行為も禁ずるべきだ」と訴えた。これは、サンタカタリーナ州の歴史教員のアナ・カロリネ・カンパノロ氏が10月28日に、「学校の教育現場は左翼寄りだから、授業の実態を録画し、教員名と学校名を添えて自分に送れ」と指示した件を指している。同氏はボルソナロ氏の社会自由党(PSL)から州議員選に出て、当選している。
最高裁判事は皆、民主主義における多様性の重要性や表現の自由を擁護する発言後、司法による大学介入を禁じ、押収物返却を命じた暫定令を承認した。
この日は下院の委員会が、学校内で政治や性について教え、討論することなどを禁じる「政党なき学校」について審議する予定だったが、定足数に満たず、延期された。
ブラジルでは、大統領選決選投票前から荒れ模様が続いている。大学での反ファシズム・デモが続く一方、サンパウロ総合大学経済学部の右翼学生4人が武装して労働者党支持者を脅す動画やマッケンジー大学学生が黒人への暴力を予告した動画が流れる、先住民保護区での焼き討ちといった事件が繰り返し起こっている。