若干22歳、初出馬でなんと46万5310票も集めて連邦議員にみごと当選した話題の日系人、キム・カタギリさん(22、三世)を10月24日に取材した。サンパウロ州選出の連邦下議の中では4番目だ。このような新しい〃大波〃によって下院議員全体の3分の2が入れ替わった。ジョルナル・ニッパキ紙、ニッケイ新聞の取材に応じたカタギリさんは、自らがリーダーの一人を務める「ブラジル自由運動」(MBL)のサンパウロ市事務所で、政治活動や日系社会との関わりについて語った(國分雪月記者)。
カタギリさんは非日系ブラジル人の母クラウジアさん、父の故パウロ・アツヒロさん(長野県系二世)の間にサンパウロ州サウト市で生まれた。父は前妻である奈良県系の母との間に3人の子供がいる。キムさんの異母姉だ。
キムさんは8歳までサウトの日系団体で野球チームに所属し、運動会などの行事にも参加していた。その後、進学のためリメイラ市に引越し、高校で工学を学んだ。その頃に政治に興味を持ち、18歳でサンパウロ市へ。
サンパウロ市にきてから、奈良県人会員で元県費研修生の姉リリアンさんに誘われ、同県人会の活動にボランティアとして参加したこともあった。
今年7月の県連日本祭りでは、眞子内親王殿下が出席したブラジル日本移民110周年記念式典にも参加していたことを明かし、「とても良かったよ」と目を輝かせた。
カタギリさんは政治家として、今後4年間、社会保障改革や治安向上、刑務所システム改善などを焦点に活動していくという。「連邦下議としてブラジリアを中心に活動する。それが議員の役目だし、4年間も選挙運動をすることはない」と前置きし、「ただし、招待があれば日系社会の行事に出席することも可能」と付け足した。
日本のアニメや漫画も大好きで、「もし機会があれば、ぜひ訪日したい。2020年の東京五輪の試合も見に行きたい」と微笑んだ。
2014年からMBLの若き指導者として、ネットの動画配信や街頭演説で若者を中心に支持を集めてきたカタギリさん。実は元々「とても恥かしがり」だったという。「練習を重ねて、ようやく人前で話せるようになった。日本人が良く知っているように『継続は力なり』を実践しただけのこと」。
取材当日は、大統領選の決選投票を4日後に控えた日。ジャイール・ボウソナーロ氏を支持表明、「まだマシな方」だとした。ただし、全面的に賛同するのではなく、社会保障改革は賛成だが軍政擁護は反対、議員給与の昇給には賛成だがペトロブラスやカイシャ、ブラジル銀行などの民営化には反対など、次期大統領とは距離を置くことを強調した。
カタギリさんは選挙運動中、公用車使用や警備員の配備、議員特典としての補助などを拒否することを公約にしてきた。「私がそれを拒否するだけでなく、ほかの議員も使わなくなるような法律を立案したい」と意気込んだ。
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若くして下議となり、注目を集めているキム・カタギリさん。取材で通された部屋には椅子とソファ、隅に置かれた机の後ろにはホワイトボード、机の横にはアコースティックギターという質素な事務所だった。また、「これは小さなリストだけど」と送ってくれた好きな漫画やアニメは約20作品に及び、その中には「ワンピース」や「鋼の錬金術師」、「進撃の巨人」から「ワンパンマン」、「天元突破グレンラガン」、「シュタインズ・ゲート」、「ギルティ・クラウン」など。訪日の際は是非、アニメの聖地にも足を運んで欲しい。
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キム・カタギリさんは、当選後話題になった「下院議長選への出馬」について、「法律的に下議長になることは可能。もし議長になっても、(汚職訴訟を抱えながら上院議長職にしがみついた)レナン・カリェイロス氏の後継路線はやりたくない」と説明した。もしも議長に就任した場合は、どこに、いくら、どう使われているのかという財政決定プロセスを透明化し、中央集権化ではなく地方分権化を進めたいとの抱負を語った。ぜひ早々に訪日して日本を体験してもらい、外交的な働きも期待したいところか。