ブラジルのボルソナロ次期大統領が1日に、エルサレムをイスラエルの首都として認め、同国のブラジル大使館をテル・アビブから移転させると発言した事に反発したエジプトが、8日から予定されていたアロイジオ・ヌネス、ブラジル外相の公式訪問受け入れを直前にキャンセルしたと、6日付ブラジル各紙が報じた。
ヌネス外相は、エジプト政府の招きで8日から11日までエジプトを訪れる予定だったが、エジプト政府は5日に、日程が合わなくなったので来訪は控えてほしいと伝えてきた。外交儀礼としては異例の事態だ。
ヌネス外相のエジプト訪問の目的は、両国間の通商関係拡大に関する会合への出席だった。会合では50余りのエジプト企業家グループとの会談が予定されており、ブラジル人企業家ら20人はすでにカイロ入りして、ヌネス外相の到着を待っていた。
エジプトは、21カ国からなるアラブ諸国連合を構成する国の一つだ。アラブ諸国はブラジル産の動物性たんぱく質製品を世界で2番目に多く輸入しており、ブラジルにとっては世界で5番目に大きな市場だ。昨年の場合、ブラジルはアラブ諸国に135億ドル分の製品を輸出し、71億7千万ドルの貿易黒字を出している。
また、ブラジルは世界最大のハラール肉輸出国だ。ハラール肉とは、イスラム教の戒律に則った方法で屠殺された肉を指す。
元産業貿易サービス省貿易局長のウェルベル・バラル氏は、「アラブ諸国との外交通商関係がすぐになくなるとは思わないが、アラブ諸国が輸入先をブラジル以外の国に変更したり、ハラール肉生産業者の新規認定や、認定期限延長を断ったりする可能性が考えられる」と語っている。
専門家の間では今後も、親イスラエル、反パレスチナ姿勢を打ち出したブラジルに対抗措置をとる国が現れる危険性があると見られている。
エジプトによるブラジル外相受け入れキャンセル措置に先立ち、先週末には、アラブ・ブラジル商工会議所のルーベンス・ハヌン会頭が、「アラブ諸国は牛肉の仕入先をアルゼンチンに、鶏肉の仕入先をフランスに替えるなどの対抗措置をとりうる」と語っていた。
今年の7月に南アフリカで行われたBRICS会議で、エジプトのシェリフ・イスマイル首相(当時・現在はシーシ政権相談役)に会い、同国への招待を受けていたヌネス外相は、シーシ大統領やショウクリ外相との会談も予定していた。
今回のエジプト訪問では、通商問題だけでなく、両国間の国防問題での協力関係も発表される予定だった。シーシ大統領との会談は本来の予定を1日延ばして行われるはずだったが、ボルソナロ次期ブラジル大統領の在イスラエル、ブラジル大使館エルサレム移転発言により、全ては水泡に帰した。