NHKの番組で先日、中高年の男性が「オヤジギャグ」を言うのは、50代をピークに「連合記憶」が活性化する一方で前頭葉の働きが落ち、節制が利かなくなるからと語っていた▼言語学をかじっただけに、「連合記憶」や前頭葉という言葉が懐かしくて聞いていると、年齢や経験を重ねる事で一つの言葉から連想できる物や言葉が増える事と、周りが何と思うかと考えてためらったりする傾向が薄れるため、安直な駄洒落が言えるようになるのだという。しかも、女性が言わないのは左脳と右脳の関係云々と続く▼これを聞き、高齢者が物忘れし易くなったり、反応するのに時間がかかるようになったりする原因は能力低下ではなく、脳の中の情報が多くなり過ぎたためとの説を思い出した。コンピューターのメモリーが一杯になると速度が落ちるのと同様、必要な情報にたどり着くのに時間がかかるようになるというのだ▼だが、様々な情報が瞬時に結びついた結果、連想できた言葉をためらいもせずに発した安直な駄洒落が「オヤジギャグ」だと聞いた途端、「口論になり、勢いで口走った」と言い訳した人や場面が頭に浮かんだ。ジャイール・ボルソナロ次期大統領が女性下議と口論し、「お前を強姦しないのはそれだけの価値がないからだ」と言い、「息子達は育ちがいいから黒人女性と恋愛などしない」と語った件などはその一例だ▼時には風刺を利かせる事も必要だ。安直な駄洒落で場を和ませる事もよいだろう。だが、ためらいや熟慮を欠いた言葉は人を傷つけ、人間関係や国際関係も狂わせる。年齢や経験を積み、置かれた立場やTPOに即した発話ができるのも中高年だと思いたい。(み)