ジャイール・ボルソナロ次期大統領(社会自由党・PSL)が就任前に下院で通過させることを望んでいる法案「政党なき学校(エスコーラ・セン・パルチード、以下ESP)」をめぐり、国内の教育界に緊迫した空気が流れている。12日付現地紙が報じている。
ESPは「学校内で政治や性教育などに関する議論を禁じる」「校内に教師の義務を列記する」などを謳っている。これは、「学校は学問だけを教えるべき」という考えに基づくものだ。
だが、この法案は、保守派が「大学内では労働者党(PT)ら左派の影響が強い」として起こしたもので、PSLから出馬して当選したサンタカタリーナ州の次期州議が、「学校の授業を録画して報告しろ」と検閲行為を呼びかけ、検察の調査対象となるなどの事態も引き起こされている。
エスタード紙によると、「試験監督をしていたら、学生の一人が『ボルソナロ氏が大統領に就任した後だったら、あいつに一発、ぶち込んでやれたのに』と話すのが聞こえた」「学生が携帯電話を充電したいと言ったのを聞いて、自分の授業が録画されるのではと思い、怖くなった」と証言する大学教員が実際にいるという。
国内最高学府のサンパウロ総合大学(USP)のヴァハン・アゴピャン学長は「法には従うが、ESPは大学の独立性を侵害する。もし、立法化されたとしても、当校はそれには従わない」と語る。また、カンピーナス大学のマルセロ・ノベル学長も、「自由に意見を戦わせる(討論する)ことができなければ、学術的な空気など生まれるわけがない」として、強く反発している。
だが、その一方で、ペルナンブッコ連邦大学では、「ボルソナロ氏に票を投じたと言っただけ」という教授が、「ファシスト」として、学生たちが作成した「哲学・人文学センターから排斥すべき教授や学生」のリストに盛り込まれるという被害にあっている。
大学内でもこうした反発や混乱があるが、司法はボルソナロ氏が望むような動向にはなっていない。フォーリャ紙によると、サンパウロ州、リオ州、ミナス・ジェライス州、セルジッペ州、アマゾナス州の最低5州で、市議会が承認した「学内では性教育に関する議論を禁止する」という条例の差し止めが行われている。
一方、マラニョン州知事に再選したフラヴィオ・ジノ知事(PT)は12日、教職員や学生・生徒に「教育現場で自分の考えや意見を表現する自由」を保障し、検閲を禁じる知事令を出した。
また、最高裁は28日に、アラゴアス州が定めたESPに類似する州条例の合憲性を審理する。同条例は昨年3月にルイス・バローゾ判事が暫定令で差し止めたものだ。
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