14日、ジャイール・ボルソナロ次期大統領(社会自由党・PSL)は次期外相に、外務省で米国・カナダ並びに米州諸国に関連する問題を担当するエルネスト・アラウージョ大使(51)を指名した。同氏には国外の公館を指揮した経験が1度もない上、前任者らに比べて異例に若い、ネット上でグローバリズムや環境問題を否定し、批判するなど、不安視される要素を持っている。15、16日付現地紙が報じている。
ボルソナロ氏はアラウージョ氏を指名した際、「29年に及ぶ豊富なキャリアのある人物」として褒め称えた。
だが実際のところ、アラウージョ氏の起用は外務省内のヒエラルキーを大きく超えるものだという。同氏は外務省において、これまで特定の組織を統括した経験がない。
アラウージョ氏に関して知られていることは、米国のドナルド・トランプ大統領を強く称える、右派礼賛的な言動だ。
同氏は17年9月、外務省が発行している雑誌に「トランプと西洋」と題したコラムを書いているが、そこで同氏は、トランプ氏を愛国心や家族や神の価値を取り戻した人物として賞賛、レーガン元米国大統領やチャーチル元英国首相と比較して誉めた。さらに「トランブ氏をファシストだと言う人がいるが、スターリンや毛沢東、ポル・ポトのような左翼独裁者こそ、ファシストだ」と語った。
この記事を、ボルソナロ氏の師匠のひとりとして知られる右翼思想家のオラーヴォ・デ・カルヴァーリョ氏や、PSLの国際担当のフィリペ・マルチンス氏が気に入ったことが、外相推薦への決め手となったという。アミウトン・モウロン副大統領やアウグスト・エレーノ大統領府安全保障室(GSI)長官は、別の人物を外相に推薦していたという。
また、アラウージョ氏はブログでも、左翼主義や左翼国家への過激な言動を繰り返している。同氏は労働者党(PT)を「テロリスト集団」と呼ぶだけに止まらず、「ブラジルをグローバリズムのイデオロギーから解放する力になりたい。グローバル経済はマルクス文化の賜物で非人間、非キリスト教的システムだ」「地球温暖化は中国に利するためのマルクス主義の産物だ」「ファシズムは左翼思想から出てきた」などの発言も行っている。
ボルソナロ氏は、次期大統領に当選して以来、「イスラエル大使館をエルサレムに移したい」と発言してアラブ諸国の強い反発を招いた上、社会主義嫌悪丸出しの言動や方針転換により、キューバがブラジルの医療プログラム「マイス・メジコス」からの医師引き上げを通達してくるなど、外交上の問題が続いている。そんな最中のアラウージョ氏指名に、一部の識者の間では、今後の外交政策などへの不安や懸念もささやかれはじめている。