ジウマ政権下で発足した医療プログラムのマイス・メジコス(MM)はブラジル全土に1万8240人の医師を派遣しているが、その45・7%を占める8332人のキューバ人医師が年内に全員撤退する可能性が出始め、各市の保健局や保健省が対応に追われていると14~16日付ブラジル国内紙、サイトが報じた。
事の発端は、ジャイール・ボルソナロ次期大統領が、MMに参加する外国人医師に能力試験を義務付ける、家族をブラジルに転居させる事を認める、参加者との契約は個人契約とし、給与は全額本人に払うといった方針を打ち出した事だ。MMに参加中のキューバ人医師は米州保健機構を介して派遣され、給与の大半は同国政府の手に渡っているため、次期大統領が「彼らは奴隷労働状態だ」と批判していた。
キューバ政府はこの方針転換や批判は当初の条件を覆すとし、14日にMMからの撤退とブラジルで活動中の医師を帰国させる事を通達して来た。
当初の契約では、MMを抜け、保護を申請した医師は強制送還する約束だったが、ボルソナロ氏は同国からの医師が保護を求めたら全員受け入れる意向も示した。キューバ政府は保護申請を避けるため、今月中に医師を帰国させ始め、年内に終わらせる意向のようだ。
だが、MMからの撤退は現場の医師に何の通達もなく発表されたため、家屋購入、その他の計画をたてていた医師らは途方にくれているという。
また、全国市保健局審議会は、同国の医師達が撤退すると、対応の約90%を同国の医師に頼っている先住民を中心に、約3200の市に住む国民2900万人が影響を受けると見ている。
MMを通して派遣されているキューバ人の医師の数は、北東部2817人、南東部2420人、南部1322人、北部1314人、中西部459人だ。州別最多はサンパウロ州の1394人で、バイア州の822人が続くが、内陸の農村部などでは、ブラジル人の医師が嫌う週40時間勤務の家庭保健計画をキューバ人医師のみが担当している例や、保健所で働く唯一の医師が同国人という例も多い。
保健省は、16日に米州保健機構の担当者らと会合を持った後、今月中にも、MM参加者の公募を始める意向だという。