中南米地域を統括するNECラテンアメリカ(高田正純CEO、ブラジル社も兼務)は、ブラジル進出50周年を祝して、記念展示「NEC Continuum」を27日から来月2日までジャパンハウス(JH、Av. Paulista, 52)で催している。26日午前の記者会見で、田辺靖氏がブラジル社CEOに就任し、高田氏はラテンアメリカ社の業務に注力する予定と公表された。JHとパートナーシップを提携し、同社が誇る最先端技術である顔認証エンジン「NeoFace」等を提供し、同館の活動を支援してゆく考えだ。
「ブラジル経済の奇跡」と呼ばれ、日本企業が殺到した軍政時代の1968年に、メキシコ、台湾と並んで、ブラジルに海外初進出を果たした同社。ダイヤル直接通話(DDD)、マイクロ波通信システム導入によるテレビ生中継など、通信・放送技術の牽引役を担ってきた。
1階の同展では、技術革新がどう社会を変革してきたのかとの観点から、半世紀の歩みを5つに分けて紹介する。
会見では、ビデオ映像を通じて、主だった事業を紹介。近年では、通信事業者向けネットワーク事業に加え、生体認証技術を活用した保安事業、大規模施設における総合的なICTインフラ構築事業を強化している。
その一つの例が、15年に連邦税務局から受注した顔認証システム「NeoFace」だ。これは世界一の精度を有する技術で、過去に不正摘発を受けた容疑者を識別することが可能だ。現在、国内における14の主要国際空港で導入されている。
このシステムは、JHにも導入される見通し。顔情報取得により、来館者の人数や年齢層のみならず、来館頻度等の調査が容易にできるようになる。また、インタラクティブ・マルチメディア機器も導入され、同館の展示情報が見られるようになるという。
会見で挨拶した高田CEOは「20年前は半導体やパソコン等の消費財が中心だったが、現在では情報通信技術を活用した社会ソリューション事業に移行している」と事業の変遷を説明した。
11年には、中南米事業の地域統合会社として、NECラテンアメリカを設立。16年には、ブラジルのITセキュリティー会社「Arcon Informatica S.A.」を買収するなど、事業転換を図ってきた。
「ブラジルではセキュリティー事業に大きな需要があると見ている。NECには世界一の技術があり、これを通じて社会に価値を生み出していく」と見通した。
なお、後任として、田辺靖氏が新CEOとなることを公表。当日は出席していなかったが、広報を通じて「生態認証や人工知能・ビッグ・データによる解決策等を重視した事業の拡大期にあたり、CEOに就任するのは大きな挑戦でもある」とコメントしている。
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NECによれば、同社が手掛けたアンゴラとブラジルを接続する、世界初の南大西洋横断海底ケーブルの建設が10月に完了した。光海底ケーブルの総延長距離は約6200kmで、毎秒100ギガビットの最新の光波長多重伝送方式を採用し、最大設計伝送容量は毎秒40テラビット。これはアンゴラの経済成長に伴い、ブラジルや、ブラジルを経由した米国との国際通信需要が増加していることを背景に建設されたものという。同社はこれまでに地球6周分延べ25万kmを超える敷設実績があり、海底ケーブルシステム事業では最大手だ。展示では、日常生活では気にも留めていない同社の技術がもたらした社会的恩恵に気付かされそう。