28日、ジャイール・ボルソナロ次期大統領は在ブラジル・イスラエル大使のヨッシ・シェリー氏と会談を行った。前日にはエドゥアルド・ボルソナロ下議が、イスラエルにあるブラジル大使館をテルアビブからエルサレムに移すのは決定事項と語っており、アラブ諸国からの反発は必至だ。また、26日にはエルネスト・アラウージョ次期外相が「外務省を文化的マルクス主義から開放する」と発信するなど、ボルソナロ次期政権のイデオロギー外交が懸念される出来事が続いている。28日付現地紙が報じている。
ボルソナロ氏とシェリー氏の会談には、アラウージョ次期外相、アウグスト・エレーノ大統領府安全保障室(GSI)次期長官、ボルソナロ氏の長男のフラヴィオ次期上議も同席した。
そこで話された具体的な内容は明らかにされなかったが、ボルソナロ氏は会談後、ツイッターで「ブラジルは世界的に尊敬される国になるために必要な全てのものを持っている」と書き記した。
ただ、会談の内容が、イスラエルにあるブラジル大使館のエルサレム移転関連であることは疑いようがない。それは前日の27日、ボルソナロ氏の三男で渡米中のエドゥアルド下議が記者団に対して、同大使館のエルサレム移転は決定事項と明言していたためだ。
この「大使館のエルサレム移転問題」は、米国のトランプ大統領が5月にイスラエルの首都はエルサレムと宣言して移転を実行、国際的に物議を醸している。エルサレムは、イスラエルのユダヤ人と、パレスチナ自治区をはじめとしたアラブ諸国が共に「聖地」と主張している場所だ。イスラエルはエルサレムを首都と宣言しているが、国連など、国際社会はこれを認めていないため、イスラエルと国交を持つ国も、大使館や総領事館をテルアビブに置いてきた。
ボルソナロ氏が米国の流れに追随しようとするのは、同氏がトランプ氏を強く敬愛しているためだ。渡米中のエドゥアルド氏は、トランプ氏支持者がくれた2020年大統領再選キャンペーンの帽子をかぶって取材に応じている。
だが、この一件でアラブ諸国の反感を買い、ブラジルがテロの標的になることや、交易関係に影響がでることを懸念する向きも少なくない。事実、アラブ諸国の一つのエジプトは、今月上旬に同国で行われる予定だったブラジル・エジプト投資フォーラムの実施を急遽キャンセルしている。
また、この会談に参加したアラウージョ次期外相も別件で問題を抱えている。同氏は26日付のパラナ州の地方紙「ガゼッタ・ド・ポーヴォ」紙への寄稿文に「外務省をマルクス主義から解放するのが私の使命」と記した。同氏は過去にも「グローバリズムや環境問題はマルクス主義者の陰謀」とブログに書いたことがあり、外相指名時にその件が欧米で報じられた。これも、中国や左派政権の国との外交への懸念を生じさせている。